人から魂が抜ける瞬間
投稿者:祝 (5)
数年前、祖父が亡くなりました。
60代の時に前立腺がんを患っておりボロボロの体でしたが、とにかく食欲が旺盛で、何回かの死線をくぐり抜けて88歳まで生きました。
最期は末期の大腸がんと診断され、もう手術するだけの体力がなく回復が見込めないとのことで、ホスピスで緩和ケアを受けました。
それでもやはり食欲があるというのはすごい事で、ホスピスから一時帰宅することも出来ました。
その時には私の母にコンビニに連れて行ってもらい、お菓子やビールをたくさん買ってきていました。病院はやはり嫌だったようで、「家は最高だ」と言っていたのをよく覚えています。
そんな祖父でしたが、桜が散り始めた頃に亡くなりました。
最期を看取る事が出来、祖父は見えない何かに話しかけ、何かを振り払うかのように腕を大きく振っていました。
私が話しかけると、認識は出来ているようでしたがひたすら腕を大きく振っていました。
祖父が何を見ていたのかはわかりませんが、お迎えが来るというのは本当なんだと私は思いました。
もしかしたら、もう少しだけ生きたかったのかもしれません。
最期は家族に見守られながら静かに息を引き取った祖父。
家に連れ帰り、両親が葬儀屋さんと葬儀の打ち合わせをしている間、私はずっと祖父を見ていました。
和室で祖父と二人だけの空間で、文字通り、ただただずっと見ていました。
そして深夜2時頃、目に見えたわけではありませんが「あ、祖父の体から魂が抜けた」と感じた瞬間がありました。
体から何かが出てきて、消えていく感じを受けました。
その瞬間から私の中で、目の前に居るのは祖父だと感じていたのに急に「祖父の形をしたただの肉体」に変わりました。よほど家が良かったのでしょう。病院で肉体の死を迎え、家で本当の死を迎えたように思いました。
葬儀の際にはお坊さんに「とてもいい顔で眠っていますね」と言われました。きっと満足のいく人生だったのでしょう。この不思議な体験は今でも忘れることなく、私に刻まれています。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。