バグる
投稿者:わらすぼ太郎 (1)
これは俺が小さい頃によく体験していた、と言うか見ていたモノの話なんだけど。
よく古いゲームとかでポリゴンがバグって異様な形になったり、巨大になったりする現象があるよね。
ゲームとはいえ普段見慣れてる物の形が急に変わるって、妙に気持ち悪いというか怖い感覚になったりするもんだと思うんだけど、それと似たようなことを現実の世界で何度も体験したことがあるんだよね。
それを最後に見たのはたぶん中学に上がるか上がらないかくらいの頃だったと思うんだけど、俺の家はマンションの6階で、結構広いベランダがついてたんだ。
よくある隙間が空いてる柵じゃなくて、白塗りの塀で囲まれてて、チビな俺は何か台に乗らないと下の景色が見えなかった。
にも関わらず、しょっちゅう変なもの見てたんだよね。
例えば少し離れたところに市立の高校があって、そこのグランドの柵がベランダの塀から突き抜けたように見えてるの。どう考えても俺の家の方が高い位置にあるのにも関わらず、グランドの柵が見上げる位置にあるの。グランドごと空に浮かぶとかしない限り、そんな見え方しないと思うんだよね。
俺もなんか変だな〜くらいは思って台に乗って下を見てみると、ちゃんとベランダより下の位置にグランドはある。もちろん柵も伸びてなんかない。
けど、台を降りて見上げると、また柵がはみ出てる。
あんまり台に乗り降りしてたらオカンに危ないって怒られるから詳しく調べたことは無いんだけどさ、そういうことがいっぱいあったんだよね。
トラックの荷台の上部分が通り過ぎて行ったり、夜には街灯のライトが星と同じ位置にあったり。
一番異様だったのは、これは後にも先にも一回しか見てないんだけど、夏の夕方に風呂上がりに涼もうと思ってベランダに続く窓を開けると、白い塀の向こうに巨大なじいさんが歩いてたんだ。
肩から上だけしか見えてないんだけど、顔だけでも幅三メートルはあったと思う。
禿げてて、ちょっと腰が曲がってて、メガネをかけてた。
いたって普通のじいさんが、スッスッスッて歩いてきて、俺の家のベランダを通り過ぎていった。
流石に俺も気持ち悪かったけど、勇気をだしてベランダに置いてあったバケツを裏返して乗って下を見てみたんだよ。そしたらその巨大なじいさんと同じ格好の、じいさんが歩道を歩いている後ろ姿が見えた。もちろん、そのじいさんは普通サイズだった。
確かにびっくりしたんだけど、それ以前にも似たようなことはいっぱいあったから、怖いとかは感じなくて「人間でも同じように見えるんだなぁ」くらいにしか思わなかった。
オカンに話しては見たんだけど、へぇ〜くらいの反応だったような気がする。ちゃんと話し聞いてなかったんだろうな。
いつしかそれも見なくなって、俺も忘れていたんだけど、高校生のときにコンビニバイトしてて仲良くなった先輩にそのことをなんとなく話してみたんだ。その先輩めっちゃいい人で、こんな話しても茶化さないような人だったから、なんかの話題の延長で言ったんだと思う。
そしたらその先輩が言うには、俺の家の近くに空間を歪めるスポットがあるのか、あるいは幽霊が通る道があったんじゃない?って言われた。
そこにたまたま通った物が虫眼鏡みたいに拡大されて空間に投影されて、それを見てたんじゃないかって。
なるほどな。とは思ったものの、その現象を見てたのはたぶん俺だけだったので(親父にもオカンにも話したことはあるが反応薄かった)俺の方にもなんか異常があったのかなぁと思う。
実家に帰ったときもベランダを覗いてみるけど、ベランダの塀より俺の方が背が高くなってしまったせいか何にも見えなくなってしまった。
いまだにアレが何だったのかは、全然わからない。
バグってたのはその空間なのか。俺の頭の方だったのかな?
アリス症候群かなと思いました。
私もアリス症候群と思ったけど見たことのないおじさんが見えたりするのは不思議だね。
今見たものを過去の記憶に差し替えてる可能性もあるけど興味深い。
進撃の巨人かと