おかえり、おじいちゃん
投稿者:心結 (5)
これは私が小学生の時に実際に体験した不思議な話です。
遠方に暮らすおじいちゃんが危篤状態との連絡を受け、私は両親とともにおじいちゃんが暮らす街へ行きました。
電車を何本か乗り継ぎついたのは自然豊かな田舎町です。
駅は無人駅で、道の真ん中にポツンと駅舎が立っていました。
そこからは急いで病院へ駆けつけました。
その日は祖母が暮らす家に泊まることに。
夜、ふと視線を感じて窓に目をやると、美しい色のトカゲがこちらを見ていました。
山に囲まれた田舎だから、トカゲも普通に来るんだな~と窓が閉まっていることを再度確認して眠ることに。
次の日の朝ごはんを食べていたところにまた病院から電話がありました。
みんなで駆けつけ、病院についた15分後に祖父は息を引き取りました。
人の死を始めて体験した私は、目の前に寝ている祖父が死んだ・・・という出来事が本当に現実なのかどうか、不思議な感情でただ立ち尽くしていました。
いったんみんなで病室を出て、最期のお支度をしてもらいました。
その間、なんとなく病院の窓から外を見ると、昨日見たトカゲと同じトカゲが窓についてたのです。
4Fまで上がってくるんだな、どこもかしこもトカゲだらけなのかな、と昨日と同じ個体とは思わずに見ていました。
そのまま葬儀が終わるまでは滞在することになり、私はふらふらといろいろなところを散歩しました。
普段は遠方で離れて暮らしているから、祖父がこの町でどのような生活をしていたのかあまりよく知らなかったのです。
祖父の死は瞬く間に町中に広がり、どこへいっても「大変だったね」「残念ね」と声をかけられました。
告別式が終わり、火葬場へいく時、車にまたトカゲが張り付いていました。
「この町はトカゲだらけだね」と母に話し、母は冗談交じりに「おじいちゃん、せっかく会いに来たのに残念だったからトカゲになって見に来たのかもね」とほほ笑んでいました。
その日は良く晴れた少し暑い日で、火葬場で火葬している間はいとこたちと一緒に外で遊んでいました。
石の上にまたトカゲ。なるべくそっと近づいて、トカゲを脅かすと面白いよといとこから教えてもらいました。
そこにいたのはいつも見るきれいな色のトカゲではなく、茶色い大人のトカゲでした。
教えてもらったようにトカゲを脅かすと、しっぽを切り離し、一目散にトカゲは逃げていきました。
その時、生まれて初めて切り離しても動くトカゲのしっぽをみて衝撃を受けたのを鮮明に覚えています。
石の上にいたのは色のきれいなトカゲでした。子供ながらにどこか本当に祖父なのではないかと思い始め、このトカゲも脅かしてみることにしました。
そっと気づかれないように抜き足差し足で近づき、思いっきり石を足でけってみました。
ですが、そのきれいなトカゲはくるりと向きを変えてこちらを向き、逃げずにこちらを見ていました。
本当におじいちゃん?と思いながら、なんだかゾワゾワしてきて母たちの元へ戻りました。
それから3日間、そこに滞在しましたが、トカゲを見ても見ぬふりをして過ごし、このことは誰にも言っていなかったのです。
来た時と同じようにまた電車を乗り継ぎ、ビルばかりの町へ帰りました。
亡くなった方が蝶々に姿を変えるなんて話は聞いたことがありますが、トカゲもあるんですね
素敵な話だと思いました