出しっぱなしの水道と盛り土の恐怖

これは私が東京の専門学校へ上京したばかりの20年ほど前の話になります。

田舎から上京してきたばかりの右も左も分からない若者にとって東京は刺激的な街であり、
また孤独との戦いでもありました。専門学校では関東近郊からの通学者や、都会慣れした人間に溢れていました。
ファッションや言葉遣い、まだまだ馴染めない事が多いなと思いながらの上京1年目初めての夏休みを迎えました。

やはり人恋しく、故郷を懐かしむ気持ちが高ぶり、どうせ東京には友人も出来ずにいるのだから
1ヶ月もの休みを丸々帰省しようと考えました。

上京してまだ3ヶ月ちょっと、ワンルームの小さなアパートの中にある物と言えばシングルベッドと最小限の家電が数点。
根っからの几帳面で神経質な私は1ヶ月の長い夏休みの間、家を空けるのだからと丁寧に掃除をし、冷蔵庫の中も空にし、
ガスや水道の元栓までキッチリと閉めて東京の家を後に帰省しました。

1ヶ月後、楽しい思い出とともに東京の家へ帰宅すると目に飛び込んできたのは出しっぱなしの水道。
まさか、ありえない！用心深い私がこんなミスを犯すわけがない、という気持ちと共に不安になるのが水道代。
すぐさま水道局に連絡をし、どう考えても1人暮らしの水道使用量ではないとの事が認められ事無きを終える事が出来ました。（確か、10万円分位の金額だったと思います）

そして何より不可思議で怖かったのが、まだ購入したてで掃除もした白いシングルベッドの中央に「盛り塩」ならぬ「盛り土」がこんもりと掌サイズに盛られていた事でした。入居時に鍵の交換代をケチったから前住人が侵入出来たのか、はたまた別のモノなのか、今となっては知る由もありませんがそんな奇妙で恐怖の体験でした。