魔は隙間から入ってくる
投稿者:fifty (1)
短編
2021/10/30
18:56
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その日の仕事は激務で、帰宅後につい、うたた寝をしてしまいました。
目を覚ませば、時計は深夜1時過ぎ。夕食もお風呂もまだ。
食べると翌日に触るので、仕方なく水を一杯飲み、入浴だけ済ませます。
布団に入る頃には、深夜2時を回っていました。
変な時間にうたた寝をし、睡眠のゴールデンタイムも過ぎて、明日は疲れが残ったまま仕事か、と少し憂鬱です。
なるべく良い気分になるイメージを浮かべながら、身体を緩めて入眠しようとした、その時でした。
「いかないで……」
私の右耳が、声を拾いました。
眠りに入る直前。意識はぼやけています。私が返事をしたのは、無意識のことでした。
「はい、なんですか?」
迂闊でした。実はこの頃、あるご縁で神道修行を始めたばかり。日頃から祝詞を上げ、部屋には頂いた結界を張ってありました。
結界は魔の侵入を阻みますが、その手前へは逆に引き寄せてしまいます。寄ってきた魔を、私は”中に招いて”しまったのです。
部屋に何かが降ってきた。そう思った時には手遅れ。影は私に覆いかぶさり、身体を貫通して背骨へと抜けました。
肌は電流が走るように痺れ、身体の力はストンと抜け、悪寒が全身に広がりました。
それから一週間はグロッキーでしたが、幸い体調はその後戻りました。
魔は、隙間から入ってきます。結界の隙間。意識の隙間。時の隙間。
もし、彼らの誘いを受けても、決して乗らないようにお気をつけ下さい。
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