私が5歳の時に祖父が病気で他界した。微かに残っている記憶では祖父はあまり家に居なくて、色々なところに出向いては生涯僧侶を全うしていたようだ。実際、海外で布教活動をしたり、国内でも各地を回ったり総本山に行ったりしていた。
祖父が亡くなった翌年に弟が産まれた。私には3つ下に弟がいたので、2人目の6つ下の弟だ。前述の通り祖父は僧侶で、その後お寺を父が継いでいた。父の後継として、上の弟は小さな頃からお経を覚えたり字を習ったりしていた。上の弟が継ぐのだと、誰もが思っていた。下の弟は産まれて間も無くして、眉毛の中に白く長い毛が一本生えているのを親が発見したらしい。そしてそれは生前祖父にも生えていたのだそう。祖父の死の翌年に下の弟が産まれたというタイミングの良さもあり、この子は祖父の生まれ変わりなのでは?なんて家族で話したりもしていた。けれど僧侶になってお寺を継ぐのは上の弟だと、誰もが疑わなかった。
時は流れて三兄弟も大人になった。蓋を開けてみると、僧侶となりお寺を継いだのは下の弟だった。上の弟は訳あって泣く泣く途中で道を外れてしまい、家族全員が落ち込んでいたとき、下の弟が自ら自分がやると言い出した。そこから仏教を学び、左利きを矯正して右で字を習い、お経や作法を必死で覚えた。編入した仏教系の大学も無事卒業し、お嫁さんももらい昨年息子も産まれた。下の弟にスポットライトが当たると突然、物事が一気に回り出したのだった。
下の弟の結婚式に感動して、いろいろなものが感化された私は、祖父が生前訪れていたインドのある地に行った。そこで偶然にも祖父の建てた石塔と祖父の護った遺跡に遭遇し、非常に衝撃的な体験をすることができた。
やはり下の弟は祖父の生まれ変わりで、僧侶としての生き方を託したのかなと思う。そして孫の中で一番長い期間一緒に過ごし可愛がってくれた私に、祖父が生前インドでやってきたことを見せてくれたのだと思う。
この想いを何かの形で残して、後世に繋げたいと思っている。
私さんは女性なのかな?
女性は僧侶になれないんでしょうか?