拾ったのはただの丸い大きな石、のはずが……
投稿者:ツチノコ (3)
子どもの頃の話です。
夕方に犬を散歩していて、学校の裏手に行きました。
いつもは子どもが通る場所ですが、その日は何故か誰もいませんでした。
静かだな、と思いながら歩いていましたが、あとになって思えば音がまるでなかったように思います。
住宅の中から聞こえてくる音も、鳥の声も、車の音も何もありませんでした。
そんな時、犬が吠えだしたんです。
あまり吠えない犬なので、猫かと思ったのですが、どうも壁に向かって吠えているようです。
ぐいぐい引っ張られて、私も仕方なくそちらへ足を向けました。
犬はいよいよ気が狂ったように吠えはじめました。なにに向かって吠えているのか、私はそこでようやく気づきました。
手のひらにのるくらいの、大きな丸い石です。
あまりに犬が鳴きやまないので、私は特に深く考えずそれを拾い上げました。
石は見た目に反してとても軽く、でもただの石にしか見えません。私はそれをひっくり返してみました。
すると、裏にびっしりと目がついていたんです。
たくさんの小さい目です。その目は確かに動いていました。
私は思わず叫んでその石を投げてしまいました。
地面に転がった石からは、よく分からない大きな虫がザワザワと出てきました。
セミくらいの大きさで、灰色っぽかったのを覚えています。
虫がこちらに向かってくるようで、私は急いで犬を引っ張って逃げ出しました。
あんなに気持ちの悪いものを見たのははじめてで、本当に生きた心地がしませんでした。
あのあと、犬を連れていてもいなくても、同じ場所であのたくさんの目がついた石を見つけることはできませんでした。
もう二度と見つけたくないと思いつつも、今でもなんだったのだろうと不思議に思います。
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