祖父の変わらぬ愛
投稿者:あんこ (4)
これは私が大学2年生、20歳の時の話です。
私は、大阪で両親と3人で暮らしていました。
両親は福岡の生まれで私の祖父母は福岡に住んでいたため、年に1、2回は必ず会いに行っていました。
当時、私はアパレルのことを学べる大学に通っていて、着物の着付けの授業がありました。
あるとき着付けの先生から、京都で着物のショーがあるからモデルとして出てくれないかと誘われ、友人数名と参加することにしました。
しかし、ショーの前日、母方の祖父が亡くなったと連絡が来たのです。
80歳を超えた祖父は高齢のため支えてもらえないと立てなくなってはいましたが、会話などはしっかりできていたし、こんなにも急に会えなくなるなんて思ってもいませんでした。
物知りで趣味の多いおじいちゃんの話を聞くのが大好きだったこと、小さい頃にプラネタリウムへ連れて行ってもらったこと、今までのたくさんの思い出がフラッシュバックしました。
最後に祖父に会うには、ショーのモデルの代わりを探さなければいけません。
私は必死に、何人にも連絡をして代わってくれる人を探しました。
しかし、次の日に迫っていたため代わりは見つからず、先生にも相談しましたがショーに穴を空ける訳には行かないため、私はそのまま出演することに決めました。
私の選択は正しかったのか、ショーを断ってでも会いに行くべきだったのではないか、何度も自分を責めました。
そんな暗い気持ちのまま迎えたショー当日、私が出演したのは着物の帯を花の形に結ぶという演目でした。
舞台に10人程が並び薔薇や百合など様々な花の形に結ばれていく中、私が着ていた着物の帯は綺麗な「桔梗」の形に結ばれていました。
祖父の死から少し経ってやっと会いにいくことができた私は、祖父の写真が飾られた仏壇に手を合わせながら、最後に会いに行けなかったことを謝りました。
ふと、仏壇に描かれている家紋が目に入りました。
花のような形をした家紋のことを祖母に尋ねると、「それは桔梗の花だよ」と。
私は驚きました。
祖父に会いに行けなかったあの日、私の背中で綺麗に咲いていた桔梗の花がそこに描かれていたのです。
そして、桔梗の花言葉は「変わらぬ愛」
あの日会いに行けず自分を責めていた私に、祖父がかけてくれた言葉のように感じました。
単なる偶然かも知れません。
だけど私はこの不思議な出来事に心が救われました。
おじいちゃん、いつまでも変わらぬ愛をありがとう。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。