管理人のおじいさん
投稿者:檸檬 (6)
私は幽霊などを実際に見た経験があるわけでは無いのですが、昔から奇妙な体験がちょくちょくあり、見えはしないけれどそういった奇妙な体験を引き寄せてしまうタイプなのかと思っています。
一人暮らしを始めたばかりの頃です。
あまりお金もなかったのでそんなにしっかりしたマンションには住めず、駅から徒歩10分ほどのアパートに暮らしていたことがありました。
そのアパートには管理人のおじいさんがおり、とてもいい人だったので見かけるたびに少しお話をしたり、朝会社に行く時に「行ってらっしゃい」「行ってきます」と言い合うようなほのぼのとした関係でした。
私が乗っていた自転車のタイヤの空気が抜けてしまったりすると、そのおじいさんがタイヤに空気を入れてくれたりしたこともありました。
普段からなんだかんだとお世話になっていたのですが、ある時から急におじいさんを見かけなくなりました。
今までは毎日のようにそのおじいさんに会っていたので、私は急に心配になりました。
ですが、おじいさんのことを聞ける相手もいなかったので、結局おじいさんがどこに行ってしまったのかわからないまま過ごし、気がつけば半年ほど月日が経っていました。おじいさんはその間1度も会うことがありませんでした。
それから間もなくして私は転職をして仕事先が変わり、引っ越しをすることになりました。引っ越しの日、このアパートを契約した業者の方に、おじいさんにお礼を伝えたかったんですがと言うと、驚いた顔をして聞き返されました。
「おじいさんって、誰のことですか?」
いや、ほら管理人のというと、ますます不思議そうな顔をされます。その反応に私まで訳が分からなくなります。
話を聞いていくと、小さなアパートなのでたまに業者に掃除をお願いすることはあっても管理人は存在しない。大家は離れたところに住んでいる。ということでした。
あのおじいさんは一体。。。近所に思い当たる人もおらず、誰だったのか未だにわかりません。
ただ不思議なのが、そのおじいさんの顔が何故か思い出せないのです。
白髪頭でいつも優しい笑顔だったという記憶だけはあるのですが。。
もしかして私はこの世に存在しないおじいさんと話していたのでしょうか。
オチがなくて申し訳ないですが、今も気になっている話です。
以前この近くで住んでいた人かもしれない。そのおじいさんは亡くなってから魂となって帰ってきたのかもしれない。そのおじいさんも人恋しかったのだろう。
実在された気の良い方だったのかも知れませんしね。その後旅立たれてしまったのかも…?何れにしろ悲しいお話ですね。