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不思議体験

天堂さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

夢の中の寺
短編 2026/04/22 15:27 1,101view
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俺は写真を撮るのも忘れてその門をくぐった。
そしてまた言葉を失った。
門の先にはまさに夢の中で見たのと同じ寺があった。
ただ、夢で見たような煌びやかさはない。
夢の中では赤や金に彩られていた壁はすっかり色褪せて所々塗装が剥げている。
そして大きさも夢で見た印象より小さく感じたけれど、寺の形や重そうな扉、そして老人が顔を出していた二階の窓はまさに夢で見たものと全く同じだった。
最初のうちはテンションが上がって写真を撮りまくっていた俺だが、冷静になるとだんだん怖くなってきた。
こんな、今まで来たようなこともない土地の寺がなんで夢に出てきたのか。
そして今ここで俺がこの寺を見つけたのはただの偶然なのか。
俺はすぐに帰ろうと思ったが、門に戻ろうとしたところで考えた。

(この寺の中に入れば、何かがわかるんじゃないか?俺がこの寺を夢に見ていた理由も、あの窓から顔を出していた老人の正体も)
それに何より、夢の中の俺は何度も何度もあの扉を目指していた。
それならば実際に中に入ってみるべきだ。
そうすることで、幼い自分が抱いていたモヤモヤも晴れるはずだ。
そんな風にどうしようもない理由を並べて、俺は再び寺へ向かった。

扉は鍵がかかっておらず、思いの外すんなり開いた。しかし中は真っ暗で何も見えない。
スマホのライトで中を照らしたその時、目の前に人のようなものが現れた。
「うわあっ!!!」
思わず叫んだその瞬間、俺の身体は物凄い力で引っ張られ、門の所まで引き戻された。
何が起こったのかわからず、我に帰った時には寺の扉は閉まっていた。

この時の俺に怖いという感情は無かった。
ただ、夢であれ現実であれ、結局俺はこの寺の中に入ることができないのだと悟った。
それが何故か無性に悲しくて、それと同時にあの老人に怒りが込み上げてきた。
一体俺と何の関係があるというのか。
俺にはそれを知る権利すらないというのか。
けど、そんな怒りを抱いたところでどうすることもできない。
俺は最後に寺の外観の写真を一枚撮り、その場を後にした。

この話はこれでおしまい、と言いたいところだが、少し気持ち悪い後日談がある。
帰宅後、カメラを確認すると、あの寺で撮った写真は全てデータが壊れていて復元できなかった。
ただ一枚だけ、撮った記憶のない寺の内部の写真が残っていた。
真っ暗でほとんど何も見えない空間に、ぼんやりと浮かぶ老人の顔。
気味が悪いほどの満面の笑みを浮かべるその老人は、夢の中で見たあの老人と同じ顔をしていた。

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