翌日も公園に走りに行った。
走っていると昨日の足音のことを思い出し、変わらない景色のはずがいつもより不気味に感じてしまう。
今日は人影が出てくる前に帰ろうかと思い、何気なく対岸に目を向けた。
「え…」
思わず声がでて、足を止めてしまった。
誰かが手を振っているのだ。
街灯の明かりがほとんど届かない場所にいるせいで表情までは見えないが、こちらに向かって手を振っていることだけはわかる。
昨日のこともあって躊躇したが、ランニング中に足を痛めて助けを求めているのかもしれない。
とりあえず池の柵ギリギリまで近づき、軽く手を振り返した。
「どうしましたかー?」
念のため声をかける。
ふざけて遊ばれているだけだったら恥ずかしいが、怪我人だったら放置するわけにはいかない。
俺の声が届いたのか、その影はピタリと手を振るのをやめた。
そして、俺の方に向かっていきなり走り出した。
それも全力疾走といっていいほどの猛然としたスピードだ。
俺が呆気に取られている間に、その人影は池に沿ってぐんぐんと距離を詰めてくる。
そいつが緩いカーブを曲がり、顔を視認できるようになったところで俺は弾かれるように背を向けて走り出した。
なぜなら、そいつの顔に目も口も鼻もなかったからだ。
青白い顔の目と鼻があるべき場所には黒い穴が空いていて、口の位置にある空洞がゲラゲラと笑うように大きく開かれていた。
体格は成人だが、髪型や服装は子供のようにも見えた。
そいつが両腕を振り乱し、足だけはすさまじい力強さで近づいてきていた。
一瞬見ただけなのに脳裏に焼き付いたその姿に追いつかれまいと、俺も全力で走る。
目指すは公園の出口、そのすぐ先に停めている自分の車だ。
アレとの距離は20mほどしかなかったはずだ。
果たして俺の足で逃げ切れるだろうか。
ダダダダダダダ
足音がはっきりと聞こえてくる。
恐怖と緊張で足が思うように動かない。
もっと速く走れるはずなのに!
すぐ真後ろで足音が、あの大きな口から吐き出される息が……






















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