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心霊

nyankonさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

夕闇の客人のこと
短編 2025/12/27 16:34 41view

おほかた、世のあはれなる事どもは、思ひがけぬ折にこそまさるものにて、

ある秋の暮れ、山里に住む友のもとへ参りしに、日はすでに山の端に沈み、道のほど暗うなりぬ。

友が庵は、古き杉の林を抜けたる先にあり。

風の音、木の葉のそよぎなど、いと心細く覚えければ、急ぎ足にて向かひしが、

ふと背後より、かすかに人の歩む気配せり。

振り返るに、誰もなし。

されど、草の擦る音、衣の触るる気色など、たしかに人のあるがごとし。

「これは怪し」と思へど、声をかけるも憚られ、そのまま庵へ辿り着きたり。

友は火桶のそばにて書物を読んでおり、我が来たるを見て、

「遅かりけるな。道すがら、誰ぞと行き合ひたりや」と問ふ。

我、「いや、誰とも会はず。ただ、後よりつけ来る者の気配のみありて、いと恐ろしく…」と

言へば、友は眉をひそめ、「この頃、その林にて怪しき影を見たりと言ふ者多し。気をつけられ

よ」と答ふ。

その夜は泊まりて、翌朝、まだ薄暗きうちに庵を辞したり。

林を抜ける折、またしても背後に気配あり。

しかし今度は、はっきりと足音聞こゆ。

恐る恐る振り返れば、そこに立てるは、昨夜の友なり。

「おどろかすな」と言へば、友は静かに首を振り、「いや、我は昨夜より庵を出ておらぬ。そなた

の後を歩むは、我には見えぬものよ」と言ふ。

その言葉に、ぞっとして再び振り返るに、誰もおらず。

ただ、朝霧の中に、うっすらと人影のようなもの揺らめきて、やがて消え失せたり。

友とともに庵へ戻り、火桶の前に座りぬ。

ふと気づけば、我が衣の裾、濡れたる手形のごとき跡あり。

「これは…」と声も出でず見つめておれば、友がぽつりと言ふ。

「そなた、昨夜ここへ来た折より、ずっと誰かを連れておるぞ。

その影、そなたの背より離れたるを、我は一度も見たことなし」

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関連タグ: #声#山#手形
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