幼い頃からお世話になっていた男性美容師さんが店を閉めた時の話です。
ファンの多い美容師さんで、私たちは一家は家族ぐるみで仲良くして頂いていました。
たくさんの方に閉店しないでと言われていましたが年齢や体調を考慮して引退を決意したそうです。
20年は経営していた店だと思います。
閉店直前に予約して美容院に向かいました。
「閉店する前に荷物減らしたいから欲しいものがあれば言ってね。」と私の髪を切りながら美容師さんが言いました。
母が「あれ?でっかい招き猫ももう無くなったの?」と美容師さんに声をかけました。
「あぁ、常連のお客さんが欲しいっていうんであげたよー。」と美容師さんは答えました。
かなり存在感のある招き猫だったので、それが無いだけでこんなに寂しい印象になるのかとぼんやり思っていました。
ここで髪を切ってもらうのはこれが最後か…と悲しくなりましたが
また家に遊びに来なさいと美容師さんに言われ、また行くねと返し家族と帰りました。
そこから1週間も経たず、美容師さんから母に電話がありました。
その時母から急にこんなことを聞かれました。
「あのまねきねこ、違和感感じたことはなかった?」と
閉店時にもう無くなっていたのであまり覚えがないことを伝えると
「お客さんに譲ったけど、あのまねきねこ夜中に急にカタカタと動き出したんだってよ」と母が言うのです。
あんな大きくて重そうなものが動くか、、?50センチ近くあるのに??と半信半疑だったのですが、好奇心が勝った私と母はその美容師さん宅にすぐ伺いました。
招き猫はもう返され、美容師さん宅に置いてありました。
「お客さんがお寺に持っていったら、『家に帰りたがってるから返してあげて』って言われたらしいんよ」と美容師さんが言いました。
詳しく話を聞くと
お客さんは招き猫を家の玄関に置いたらしく
カタカタと音がするから見に行くとこの招き猫が震えており、目元に黒いシミのようなものが見えて泣いているようだったと言います。
美容師さんの部屋に置かれたまねきねこは、店に置いた時と変わったようすはありません。
底が削れていて風で振動したのでは?とも思いましたが、特に削れている感じもなく、触ってみてもどう考えても振動するものではなかったのです。
そんな時、美容院の元看板犬の写真が目に入りました。写真の前には遺骨も置かれていました。
閉店する少し前まで看板犬としてお客さんを出迎えており、たくさんのお客さんに愛されていた看板犬でした。
その小型犬は、いつも小刻みに震えていました。
最初は寒いのかと思っていましたが、たまに来る美容師さんの奥さんに
「病気かと心配したけど、この子の癖らしいんだよね。」と言われたことも覚えていました。
美容師さんも奥さんも、ペットロスですごく元気がなかったので、「あの子が宿ってるのではないか。心配かけているのではないか」という話で落ち着きました。























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