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不思議体験

たちさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

なんで、俺?
長編 2025/03/08 00:27 4,665view
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「もう、行くの?」

「と耳元で囁かれた。それから記憶がない…気づいたら自分のアパートの前に立っていた。」
佐々木も村田もあまりの怖さで何も言えずにただ話を聞いているだけだった。
葛西さんはこの話をしている最中もずっと窓を見ている。
沈黙の時が流れる。
5分、10分、15分ほど経っただろうか、葛西さんが口を開いた。
「お前らが無事でよかったよ。俺だけ…」と小さな声で呟いた。
「で、でも、葛西さんも無事で帰ってこれたじゃないですか。」と佐々木がなんとかこの空気を打破しようと話しかけた。
「そ、そうですよ。持ってきたやつ食べて元気出して下さい。」とその場しのぎのようなことを村田は続けて語りかけた。
「買ってきたやつ冷蔵庫に入れておきますね。」
そう言うと村田は立ち上がり、冷蔵庫に向かった。葛西さんは相変わらず窓を見たまま。

佐々木はその空気に耐えきれず、村田の様子を見るような仕草をしていた。

コン…コン…

微かに音がしているのに佐々木は気づいた。今まで気づかなかったが、何かを叩いてる?ような音がしている。ずっとではなく、わずかに間をあけながら。
佐々木は、音も気になったが目の前にいる葛西さんの目線も気になった。
ずっと窓を見ていると思っていた目線がわずかに左右に動いている。
左、右コン、左、右コン…
葛西さんの目線がわずかに右に動くと、コンという音がしていることに気がついた。
佐々木は一瞬にして、状況を理解し、言葉にできない恐怖に包まれた。
「ありえない…ありえない…ありえない…」
心の中で何度もそう呟いた。
そして、ふと葛西さんが見ていた窓を見ると一瞬人影のようなものが見えた。

「ヤバイ!」そう思い、すぐに顔を下に向け、目を瞑った。
「帰ろう」と言う村田の声が聞こえ、目を開けると葛西さんが佐々木のことを見ていた。
ずっと窓ばかり、見ていた葛西さんが突然佐々木を見ているのに更に恐怖を感じ、急いで部屋を出た。

村田は帰り道、付き合ってくれたお礼や葛西さんを今後どうするか、先輩達に何て話すか喋っている。佐々木は村田の話など耳に入らず、
「なんで、あの人最後に俺を見てた?窓に一瞬見えたのは他の部屋の住人だよな?」と考えていた。
下を向きながら歩いていると耳元で、

「違うよ」

という女性の声がした。佐々木は、立ち止まり、目を瞑った。
「は?なに?気のせい?村田の話の一部?」
と混乱しながら。
「なんで俺?肝試しにも行ってないのに。葛西さんだって初対面。俺に何か見えるわけない。」そう自分に言い聞かせた。
すると、先程とは逆の耳元で、

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