居るはずの無い子
投稿者:太田 馨 (2)
私は叫びながら自室へと戻ると
同室のクラスメイトの心配すら無下にし
布団にくるまりぶるぶると震えました。
自分の部屋のドアもすりガラスになっていて
電気のついた廊下の様子がよく見えましたが
ちらりとも確認することができませんでした
なぜならあの恐ろしい顔が、
再びこちらを覗いているかと思うと
怖くて仕方が無かったからです。
しばらく布団にくるまり震えていると
自分の宿泊部屋を友人がノックしにきました。
「おーい、いつまでそうしてんだよー
隣の部屋で先輩たちとトランプしようぜー」
それは聞き慣れた友人の声でした。
私は安堵を覚えたと共に友人に問いかけました
「ねぇ、廊下に何もいない?
黒い目で、大きな口の何か、いない?」
「はぁ?いねぇよ?寝ぼけてんのー?」
友人はなんの事だか。といった具合に返答し
先輩たちのいる部屋に入っていきました。
そうなると、幼い自分は、先程の恐怖より
夜中に遊びたいという欲求が勝ってきました。
なにより、廊下に出ても友人は無事だった。
なら私が廊下に出ても無事に決まってる。
そう考えて意気揚々とドアを開けたその時。
自室の前にある宿泊部屋のすりガラスから
白い長い手が伸びているのが見えました。
視界の端なんかじゃなく、完璧に両の目で
こちらを狙っている白い手を見てしまった。
そして私は、恐怖のあまりその場から
完全に動けなくなってしまいました
視界に映る白い手は、ゆっくりと
手前の部屋のドアを開けていきます。
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