居るはずの無い子
投稿者:太田 馨 (2)
1階には案の定、いくつか宿泊部屋がありました
だが奇妙なことに、その部屋のどれもが
人の居る気配が全くしないのです。
音もなければ明かりも無い。目を凝らせば
しばらくこのフロアが使われていなかったような
気もしてくるほど、目立った汚れが見て取れた。
もうこの段階で私は心底怯えていましたが
一旦フロアの突き当たりまで歩いてみて、
少年が居なかったら自分の部屋に戻ろう。
そう考えて、歩みを進めました。
上履きが床を蹴る音が気持ち悪い程響いて、
それが、”このフロアに自分しか居ない。”
という事の証明になっている気がして
どんどん心臓の鼓動が早くなってきました。
フロアの突き当たりまで、着くや否や
怖さが限界になった私はかけ足で
階段に向かっていきました。その時でした
ドンッ!!!!!!
とある宿泊部屋の中から、ドアに向かって
何かがぶつかってくるような音がしたのです。
その瞬間に私は更に帰る足を早くして
階段の方へと向かっていきました。
ドン!ドンッ!!!!
音が複数回になってきた。
そしてその時、ちょうど私が
音のする部屋を通り過ぎる瞬間でした。
私は見てしまったのです。
ドアの真ん中の、すりガラスからうっすら見える
音のする宿泊部屋の中を見てしまったのです
すりガラスにべったりとくっついた人の顔。
それは間違いなく先程見た少年でしたが、
先程と異なるのは、少年の顔が、
ペンで塗りつぶしたように真っ黒な両目と、
裂けんばかりに大きく開けた気味の悪い口で
構成されている。という点でした。
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