葬式が終わり、49日が過ぎた。
両親は悲しみながらも少しずつ前を向いて元の生活に戻ろうとしていた。
しかしAさんはなかなか立ち直れなかった。
学校を休みがちになり、水が怖くなった。
特に川が恐ろしく、川のそばを通る時は息を止めて走るようになった。
特に弟が落ちて死んだ川には絶対に近寄らなかった。
弟が亡くなって一年経つと、Aさんにある変化が現れた。
それは、今まで夢を見ることなどなかったAさんが、頻繁に鮮明な夢を見るようになった。
そして数日後、夢の出来事と全く同じことが起こる。つまり予知夢を見るようになってしまったのだ。
Aさんはすぐに、弟の能力が自身に移ったのだと理解した。
しかしAさんが得た予知能力は、弟が持っていたそれを遥かに超える力を持っていた。
「弟は基本的に地域内で起こることしか予言できなかった。けど俺はさ、例えばどこどこの国で戦争が起こるだとか、どこでテロが起こって……とか、そういうのも全部夢に出てくるんだよ。つまり予言の範囲が地域内だけじゃなかったんだ」
Aさんはこの予知能力を恐れた。
見たくないものを強制的に見せられる恐怖。
何が起こるか知っていながら回避できない罪悪感。それを誰にも話せない苦痛。
弟はどれだけつらい思いをして生きていたのだろう。幼い頃から事故や災害、果ては自分達が死ぬ予知まで……。
Aさんはこの時はじめて、弟がいかに孤独感に苛まれていたか、そしてどれだけ怖かったかを思い知った。
そして唯一話を聞いてくれたAさんに拒絶された時、どれだけ絶望したか……。
Aさんは、これは罰なんだと悟った。
弟を信じ切れなかった自分に対する罰だと。
「だから俺は、誰にも信じてもらえなくても予知したことを話すようにしてるんだ。弟が遺したこの能力が本物だと証明するために」
その後Aさんは退職し、今ではもう連絡も取っていない。
しかし今でも災害が起こる度に、Aさんのことを思い出す。
























悲しい話やな…
弟さんはAさんと共に死ぬか自分だけ死ぬか、どっちが良かったのか、
どっちにしろ嫌な予知を見るって相当辛いでしょうね…