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不思議体験

神無月さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

神の子ども
短編 2025/01/13 15:00 932view

私には、普通の人にはない特殊な能力がありました。
この能力を授かってしまった理由を今からお話ししたいと思います。

私が持っていた特殊な能力、それは
“触れたものを修復する”
というものでした。
といっても私にできたのは精々”割れたガラスの修復”や”破れたノートの修復”くらいで、命に関わるようなものを治すことはできませんでした。
この能力については誰にも話さないよう母から教わりましたが、その理由については後述します。

過去形で書いているのは、今はもうその能力が無いからです。
母に病気が見つかり、それから次第に能力が衰えていき、母が亡くなると完全に使えなくなりました。
そして母の死後、私宛の遺書が見つかりました。
その遺書を読んではじめて、私は自分にこの
能力があった理由を知りました。
遺書には以下のようなことが書かれていました。

母は15歳の誕生日に、高熱を出して寝込んでいたそうです。

意識が朦朧とする中、母が寝る部屋の襖がするすると開くのが見えました。
家族の誰かが入ってきたのだろうと思ったそうですが、違いました。
入ってきたのは天井にぶつかりそうなほど大きく、恐ろしい顔をした”何か”だったそうです。
長い髪を振り乱したそれは桃太郎などの昔話に出てくる鬼にそっくりだったそうですが、肌の色は人間と同じで、尚且つ立派な着物を着ていたとの事です。

“それ”は、母を見つけると、自分がこの土地に住まう神であることと、母に神の子を産む権利があることを話しました。
そして、高熱で身体を動かすこともままならない母の布団を剥ぎ取ると、そのまま母の衣服を脱がせてゆっくりと覆い被さってきたそうです。
下半身に激痛が走った母は、そのまま気を失い丸2日寝込んでしまったようで、次に目が覚めたのは病院のベッドの上でした。

母は、あの日自分が見たものについて誰にも話さなかったそうです。
恐ろしい目に遭ったというより、自分が何者かに犯されるという”夢”を見てしまったことが恥ずかしくて、無かったことにしようとしたのです。
現に母は裸で寝ていた訳ではなく発見された時はきちんと衣服を身に纏っていたようで、尚更あれは夢だったんだと思うようになりました。

その後母は父と出会い22歳で結婚、2年後に妊娠しました。その時に身籠ったのが私です。
これといったトラブルも無く難なく出産を終えた母は、しばらくは実家で子育てをするべきだという祖母の意見を聞き実家へと戻りました。
そして久しぶりの実家での夜、私を寝かしつけて布団に入ると、背後に何かの気配を感じたそうです。
はっとして振り向くと、そこにいたのは15歳の母を襲ったあの”神”でした。

「久しぶりだな、◯◯」
神はそう言うと母を背後から抱きしめてきたそうです。
しかし”◯◯”は母の名前ではありませんでした。
「私、◯◯じゃないです……」
声を震わせながらそう言うと、神は
「向こうの世界ではお前は◯◯だ」
と返してきたそうです。
そしてベビーベッドで眠る私をちらりと見ると、母にこんなことを告げたそうです。
・産まれた子供は母と自分(神)の子供
・この子供には普通の人間には使えない特殊な能力がある
・その能力のことを他言させてはいけない。誰かに話せば母が死ぬことになる
・この子供は運良く能力の程度が低い状態で産まれた為、きっと長生きする
(能力の程度が高ければ高いほど早死にするそうです)
母は当然、信じられませんでした。
しかし目の前に神がいて、意識のはっきりしている母の前で喋っているのもまた事実でした。
このことで母は、あの日の出来事が夢ではなかったと思い知らされてしまったのです。

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