館の鏡
投稿者:Malukn (2)
夜中、深い山の中にある小さな村がありました。その村では、古くから「鏡の館」と呼ばれる一軒の古びた家が存在していました。村人たちは、その家には昔、奇怪な出来事があったと囁き合っていました。
ある日、若い夫婦が新しくその家に引っ越してきました。夫婦は穏やかな日々を過ごしていましたが、やがて夫が村の人たちと話しているうちに「鏡の館」の奇妙な噂を聞くようになりました。
村の言い伝えによれば、その家の中には普通の鏡とは異なる特別な鏡があるとされていました。その鏡を見た者は、未来の自分を見ることができ、しかし、その未来は必ずしも幸せなものではないと言われていました。
夫婦は興味津々でその噂を確かめるため、「鏡の館」の中にある特別な鏡を見つけました。夫が最初に鏡を覗き込むと、彼の表情が一変しました。不安と恐怖が顔に広がり、彼は声を上げて叫びました。
妻は夫の様子に驚きながらも、興味津々でその鏡をのぞきました。その瞬間、彼女の顔が死のような青ざめを帯び、彼女もまた悲鳴を上げました。
夫婦はそれ以来、鏡の前で見た未来に引きずられるように不幸な出来事が次々と訪れました。村人たちは、夫婦が「鏡の館」の呪いにかかったのだと囁き合い、村から彼らを遠ざけるようになりました。
そしてある夜、村の人々は彼らの家を訪れ、恐れを抱えながらも「鏡の館」から去るように伝えました。夫婦は無念の思いでその場を離れ、村を後にしました。その後、村では彼らのことを誰も覚えておらず、かつて「鏡の館」に住んでいた夫婦の存在は村の中で謎めいたものとなりました。
「鏡の館」は再び静寂に包まれ、ただひときわ古びた館は、未だに秘められた力を持つ鏡を抱えて、深い山の中で静かに佇んでいると言われています。
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