お盆と親友
投稿者:ひなた (2)
じゃばじゃばと水をかき分ける音が耳に入る。黒い水は僕の体温を奪い身動きをしずらくしていく。
怖い、恐ろしい。頭の中で鳴りやまない騒音に気が狂いそうだった。
ただ、親友の手を握り、僕は歩いたんだ。
しばらくして
ついに黒い水は僕の腰あたりまでの場所まで来ていた。
まだ少しぼうっとする頭で自分の家の方向を見る。
明かりがついていた。こんな夜中なのに。なぜだか少しほっとする気持ちになったけど、それが逆に恐怖心をあおる。
周りには真っ暗闇があるだけだというのに、僕の視界には月の光が反射する。
「帰ろう。」
僕は親友の手を握ったまま、そのまま海の方へと向かう。
顔に水がついた瞬間、急に自分の頭にかかっていた靄が晴れたように思考がはっきりした。
「お前、誰だ…?」
親友の手を握っていたはずなのに僕が握っていた手は黒い何かだった。
それは波のようにうねうねと動き、僕の手を離すまいと力を強めていく。
僕は急に恐ろしくなり力いっぱいその手を振り払った
その黒い何かは僕から手を離すと海に沈んでいく。
沈む瞬間、それがにやりと笑ったような気がしたんだ。
足がつくところまで泳いでいき、陸に上がるとそこにはおばあちゃんが立っていた。
おばあちゃんは僕にタオルをかけてくれて、こういった。
「あれだけ一人でお盆中に海に行くなといったのに」
単純な話だけれどそれから僕は海に近づかなくなった。
まず結局僕が親友だと思っていた人なんてそもそも存在しなかったのだ。
お盆には、海に行ってはいけないと良く私も言われ、現在でも行かないが、観光客はそれを知らずか、必ず何人かは亡くなります。