庭で佇む人

私が初めてその人を見たのは、その家に住み始めて3～4年経った頃でした。

朝起きてカーテンをシャーっと開けたら、目の前の庭に人影が見えたのです。

ぎょっとして、しばらくその場に固まってしまいました。

だって、私の家の庭に見知らぬ女性が佇んでいたからです。

ご近所さんかと思って顔をじろじろ観察したけど、それは見たことがない人でした。

最初は不審者がいるのかと思って、慌てて電話に手をやりました。

すぐに警察に電話しようと思ったのです。

しかし、その手が止まります。

なぜなら警察に電話をかけようとした瞬間に、今まで庭にいた人物が目の前で姿を消したからでした。

自分で見たものが信じられなかったです。

でも本当に徐々に光にかき消されるように消えていくのをこの目で見ました。

何度も見間違えと思って目を擦りました。

本当に今見たものが信じられず、何を見てしまったのかと崩れ落ちそうになりました。

これが庭で佇む人を初めて見た日の感想です。

その日うっかり波長が合い、幽霊を見てしまったのだと思い込もうとしました。

でもそれは無理でした。なぜならそれからその女性を頻繁に見るようになったからです。

最初は家の中から見える場所にいるくらいだったのですが、その内、庭にいるときに見かけるようにもなりました。

庭の花に水をやって職場に行こうとしたら、突然隣に立っていたこともあります。

あまりに仰天しすぎて、その人が消えてしまうまで、言葉も出ませんでした。

ただそれが何回も続くと、さすがに今度は誰なのかが気になってきます。

私はこの家を借りて住み始めました。

だからもしかして私の前に住んでいた人の幽霊か何かだと疑っていたのです。

だからいろいろと聞いて回ったけど、私の住む家に以前住んでいた人は派手なスポーツカーを乗り回す若い男性だったと聞きました。だからその女性ではありえません。

だったらその人に恋人か何かはいなかったのかと聞いてみました。

でもその人は独り身だったらしく、女の影はなかったらしいです。

だったら私がいつも見る庭で佇む人は誰なのかとますます気にかかりました。

その日の朝はなんとなく、胸がドキドキしていました。

異様に鼓動が早くて、ちょっと胸騒ぎがしました。

いつものようにカーテンを開けると、いつものようにあの人が佇んでいます。

もうその頃には見慣れてしまっていて、驚きはなかったのです。