鳥居

　周期的になんとなく運が悪いというか、いわゆる”ついてない”時期がやってくる。そういうときは厄年とか関係なく神社にお参りしたり、墓参りをしたりすると自分なりのルールを決めていた。普段は信心などあまりないのに我ながら都合がいいとは思っていた。

　またその時期が来たため、またかと思いつつ、空き時間を見つけては、もしくは旅行がてら神社にお参りしていた。その時期はとくに長く運の悪い時期が続いた。各地の神社で毎回引くおみくじも大凶などは出ないものの小吉だとか吉だとかパッとしないものばかりだった。それでも自分で何とかする手段はなく神社へのお参りは続けていた。

　ある神社でお参り後、鳥居から出ようとするとがっと肩をつかまれた。振り向くと神主のような人がいてつかむ強さとは裏腹に優しい諭すような口調で
「あなたこの鳥居から入ってないでしょ？」
確かに、入ってきたのとは違う鳥居から出ようとしていたので、少し驚きながら返事すると
「入ってない鳥居から出ちゃだめ。あっちから帰りなさい」
すこし遠回りになるが言われた通りに帰った。

　家に帰って調べたところ、神社の礼儀作法で「入ってきた鳥居から出ましょう」とさらっと書いているサイトがみつかった。「失礼しました。」という挨拶をして出ていく意味があるそうだ。確かに黙ってでていくのは失礼かと妙に納得した。
　それから神社に参る際にこのことに気を付けるとすぐにツキが回復した。神社の真ん中を通ってはいけないとかはよく知られているがこの礼儀については知らない人が多いんじゃないか。知らず知らずのうちに神様に失礼を働いていることがあるのだとぞっとした。