ガラス越しに見た背後の廊下
投稿者:HERO.R (1)
まだ私が高校生だった頃、クラブ活動で怪我をした足の手術のために入院したときのお話です。
同室にいたAちゃんとは年が近いこともあり、すぐに仲良くなりました。売店で買ったおやつを夜中に二人でこっそり食べていたある日、Aちゃんがトイレに行きたいからついてきて欲しいと言われました。
私自身もジュースを飲み過ぎていたこともあり、二人で廊下にあるトイレへ向かったのは0時をまわった頃でした。
廊下のトイレには個室が1つしかなく、Aちゃんが先にトイレへ入り私は廊下の窓から外を眺めていました。ふと気づくと私の後ろを車椅子のお爺さんがゆっくりと通りすぎて行きます。こんな時間に起きてるのは私達だけじゃないんだと思いながら、なんとなく振り返って挨拶をしようとしたその時です。
私はトイレの入り口と対面する窓ガラスの真ん中、つまり廊下の中央に立って外を眺めていたことに気付きました。
廊下は狭く私が中央に立っているため、背後を車椅子が通過するには狭すぎるのです。音もなく通り過ぎた車椅子でしたが、はっきりとお爺さんの顔も頭に焼き付いていました。
「Aちゃん!早く出てきて!」
咄嗟にトイレのドアを叩き出てきたAちゃんに説明する間もなく痛みのある足を引きずりながらナースステーションに駆け込みました。
「昔からよくそんな相談を受けるのよね」
看護師さんの話では、その病院では何年も前から窓ガラスに映る車椅子のお爺さんが深夜に目撃されているそうです。それも、私が目撃した窓ガラスにのみ映るそうです。
後日、足の手術も成功し無事に退院し私の身には何も起こっていませんが、何年経ってもお爺さんの寂しそうな顔は鮮明に思い出されます。
その後、古くなった病棟は建て替えられたので、車椅子のお爺さんが映る窓ガラスはなくなりましたが、今も車椅子のお爺さんは自分を見つけてくれる人を探しているかもしれませんね。
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