あらしのよるに
投稿者:Јосип (2)
短編
2022/11/21
16:01
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その日の夜は上陸していた台風のおかげで酷い風だった。
築40年程になる古いうちの雨戸は激しい雨風に吹かれてうるさく、とてもぐっすり眠れる状態じゃなかった。
そのせいか、僕は生まれて初めて金縛りにあった。聞いてはいたけど本当に動かない。目は開けられるのかもだけど、
何か見えてしまったらと思うと、絶対に開けたらダメだと思い、むしろ固く閉じることにした。
恐怖でしかなかったので、家族を呼ぼうとする。けど声が出ない。スーッと空気だけ抜けて、声帯に当たっていないような感覚。
とにかくなんとかしなければと、体を起こそうとすると最初よりは動けるようになっていることに気付いた。
ベッドから起き上がろうとすると、なぜか体が逆方向の窓の方に引っ張られて、またベッドに寝てしまう。
それを何回か繰り返している内に突然金縛りが解け、そのまま眠ってしまった。
翌朝、正に台風一過というように気持ちよく晴れ渡っており、カーテンを開けた。そこにはいつもと違う風景があった。
庭に幹の太さが直径20cm程のモミジの木がある、それが根本から折れて倒れていた。
小さい頃ブランコをかけたりして遊んだ思い出の木。そいつが何か僕に伝えたかったのかもしれないと思うと怖いような悲しいような不思議な感覚になった。
原因は父が撒いた除草剤です。ごめんな。
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