今は確かめる術をなくした手形の話
投稿者:迦陵頻伽 (2)
これは、私が数年前まで住んでいたアパートで体験した出来事です。
その当時住んでいたのは住宅街のなかにある五階建てのこじんまりとしたアパートで、そこは夜になると車通りもそんなになかったので静かに過ごせるのがお気に入りでした。
ただ唯一、ベランダがないのが難点ではありましたがそれでも、窓の外には物干し竿が吊るせるようにはなっていたのでそれを使って洗濯は外に干していました。
物干し竿がある方は建物の裏に面しているところで、そちら側は塀を挟んですぐ戸建ての住宅になっており、防犯の面からも女性が一人で住むには適していたと思います。
ある秋の日、いつものように仕事から帰宅した私は風呂上がりに洗濯機を回しておりました。
だいたい洗い上がるまで一時間。
いつものルーティーンで洗い上がるまで晩酌をするのですがその日は気まぐれに月見酒でも洒落込もうと思い、窓を開けたのです。
「…………え?」
窓辺に腰掛け、見上げたところで私は思わず声をこぼしてしまいました。
何故ならいつもは洗濯物を干すだけなので対して見てはいなかったのですが、大きさにしてペットボトルのキャップサイズの赤い手形がくっきりと、それも複数ついていたのです。
私はこわくなりその日から洗濯物を干すことはおろか、どんなことがあってもその窓を開けることをやめました。
現在は引っ越してしまったので手形の正体がなんなのか確かめる術はありません。
ペットボトルサイズと言うと猫の手形位ですかね?