黒蛇信仰
投稿者:スザク (1)
Aもそう思ったそうでその質問をBにしたそうです。
Bは子供の頃にたまたま大人達が次の生贄を誰にするか相談しているのを盗み聞きした事があったそうです。
そしてBはそれ以来、身内やその関係者の不審死が多い事を疑惑の眼差しで見ていたそうです。
Bとしては一族が直接手を下す様な犯罪をしていたらという心配が強かったそうですが…。
しかし、一族は直接手を下してたわけではなく、何らかの儀式によって生贄と認定したものを黒蛇様に襲わせている事がわかったそうです。
そしてその事を知ったBは次の生贄にされてしまうと…。
Aはそこまで話すと漸くテーブルの上の酒に手を伸ばし、グイッと酒を呷りました。
私は何だか洒落怖の話しを聞かされた様な変な気持ちで、でも何だか落ち着かない様な気持ちでAを見つめていたのを覚えています。
妙な沈黙の後、私はAに訊ねました。
「その話しってAはどこまで本当だと思ってるんだ?」
Aは少し考え込む様にしてから
「わからない…」
と答えました。
「俄には信じ難い話しだし、Bが俺を担ごうとしてる可能性もあると思った。
でも、Bの様子は真剣そのものだった。
そして…Bが死んだのは事実だ…」
「Bの死因は?」
「…心不全」
私は何故か言葉に詰まりました。
Bがノイローゼや心の病で自殺したという可能性が消えた気がしたからです。
でも、同時にAが何故ここまで憔悴している様子なのかを不思議に思いました。
そんな私の疑問を察したのかAは言いました。
「夢を見たんだ。Bの。
真っ黒な大蛇がBに覆い被さってた…」
Bから聞いた話しとBの死を繋げて考えてたから想像力が見せた夢なんだろうけど、と前置きした上でAは言いました。
「黒い大蛇が生々し過ぎて只の夢とは思えないんだ…。俺は夢の中で思ったよ。
あぁ、アレには勝てない…。
あんなに禍々しく、あんなに大きな蛇には…」
私はその時鳥肌が立ったのを覚えています。
でも、ひとしきり吐きだしてスッキリしたのか、Aが腹が減ったというので簡単な食事をさせました。
腹が満たされたAは眠くなった様で酒もそこそこに眠ってしまいました。
私は何だか目が冴えてしまって寝るどころではなく、色々考えていました。
黒蛇自体が縁起が悪いですからね。
見たとなれば、先ずはあなたが気をつけて下さい。