マラソン大会前夜の奇妙な話
投稿者:側溝 (1)
私が学生の頃のマラソン大会前日に起こった奇妙な話です。その日の夜、私は明日のために走ることにしました。これはとっさの思いつきで、すぐに帰れるだろうと思っていたので夜9時をすぎていましたが、親に告げずに家を出てしまいました。コースは近くの神社まで行って帰ってくるルートで、当然よく知っている道でした。外は静かで人の気配はありませんでしたが、スマートフォンで陽気な音楽を聴きながら走っていたので、とりわけ気にしていませんでした。
しばらくすると、折り返し地点の神社の前に着きました。私はここまで来るのに想像以上に疲れていたので、帰りは近道をしていくことにしました。辺りは相変わらず静寂につつまれていて、人はだれ一人いませんでした。
暗闇の中を走っていると、突然音楽が止まりました。スマートフォンの電池が切れたのです。しかたなくイヤホンをはずすし、ふと辺りを見渡すとそこはまったく知らない場所でした。この時、私は暗闇に一人残された恐怖より親に怒られるという焦りが勝っていたので、早く家に帰らなければならないと夢中で走りました。しかし、慌てれば慌てるほどますます道がわからなくなり、とうとう完全に方向を見失ってしまいました。
途方に暮れていると、一人のおばあさんが椅子に座っていました。携帯が切れていたため、もう見知らぬ人でも聞くしかないと思い、おばあさんに道を尋ねました。するとおばあさんは、「自分で考えてここまで来たのだから、逆に今来た道を自分が思った通りに行けばきっと帰れるよ。」と言いました。冷静に考えれば、意味のわからない道案内ですが、親に叱られるという焦りから当時の私は言われた通り一生懸命に走りました。
しばらくすると鳥居が見えてきて、神社にたどり着き、私は本当に家に帰ることができました。案の定親は怒りましたが、この不思議な話をすると父は神隠しかもしれないねと笑っていました。
これ以来、私は神社に行ったら必ず参拝をするように心がけています。そして、あのおばあさんはなぜあそこに座っていたのかいまでもまったくわかりません。
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