日本人形
投稿者:五條 (1)
短編
2022/09/12
19:08
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私がまだ保育園に通っていたような幼いときのはなしです。
私の家には曾祖母の代から日本人形がタンスの上にありました。
それがある日、母の部屋から私の部屋に動かされました。私が「あの人形が欲しい」と言ったからです。昔の人形は、今のものと違って本物の人の髪の毛でできていたのですが、私はそれを怖いとは思っていませんでした。
私の部屋に人形が来てから数か月で、不思議なことが起こり始めました。まず一つ目は、人形が動いていること。私は背が低く、タンスの上に置いてある人形が動いていることには気づいていなかったのですが、母がそれに気づきました。その時はタンスを開ける振動で動いているのかとそこまで気にしませんでした。しかし、ほかにも不思議なこと起こりました。
私が熱を出して寝込んでいた時です。夢の中に、その人形が出てきたのです。夢の中で人形は、歌を歌って頭をなでてくれました。そのうち、普通に夜寝ていた時も歌を歌ってくれるようになりました。そしてある日、ついに朝起きた時頭のそばに人形があったのです。母はやっていないというし、私も高いところに置いてあった人形には手が届きません。びっくりしましたが、私はその人形を抱えて寝るようになりました。
その人形は古くなって人形供養に出してしまいましたが、今でも忘れられない思い出です。きっとあの人形は私たちを守ってくれていたんだと思います。
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日本人形の怖いイメージが覆るような温かい話