もう一人、いる
投稿者:yumy (19)
それはわたしがまだ、とある介護施設で働いていた頃の話です。
その建物は、なぜか3階だけ暗いんです。もともと埋め込みのモダンな電球なのもありますが、同じ間取りの2階よりもなぜか暗い。
何も感じないわたしでも、この階だけなんか変だな、と思うほど。
他の職員も同じように思ったようで、「絶対なんかいるよね」とか、「霊の通り道なのかな」とか話をしていました。
そんな場所で、同僚が夜勤をしていたある日のこと。
この施設は昨今の色々な事情もあり、廊下の共用部には監視カメラがついていました。
誰かが動いている時や異変があった時にいち早く気づいて向かうことが出来たり、一人で動ける方はその様子を見守ったり。
もちろんそのモニターはスタッフルームにありました。
夜中、同僚がモニターをチェックしていると、一人の男性が、廊下から自分の部屋に帰っていくのが見えました。
そして、その後ろをついて行くように、老婆が同じ部屋へ入っていきました。
同僚は眠かったこともあり、その時は一瞬、あれ、なんか2人部屋に入っていったなぁ、とのんきに思ったそうです。
それからもモニターを見ながら、あれ、でも、……あんな人いたっけ? と同僚が思った瞬間、
ぞっ、と背筋が急に寒くなったそうです。
そう、その男性のあとに続いていたのは知らない人。一件施設にいるような、普通の老婆でしたが、その人はこの施設にはいない人でした。
そのまま、その同僚はしばらくモニターを見続けていましたが、その部屋からあの老婆が出てくることは、ありませんでした。
あの場所の3階には、もう一人。いないはずの住人が、いたのです……。
それもはっきりと、モニターに映るくらいに普通に。一瞬ただの施設の人だと思ってしまうくらいに。
そのあと、わたしはもう仕事を辞めてしまったので、その人が誰だったのかはわかりません。
そう、ですから、その部屋に入っていった何も知らない男性がその後どうなったのかも、いまではわからずじまいです。
そして、きっと、その人はまだ、あの3階に住んでいるのでしょう。
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