夏休み、人ではない何かに招かれた話
投稿者:曲者 (1)
これは私が小学校2年生の時の話です。私の家では毎年、長野県に住んでいるおばあちゃんとおじいちゃんの家に遊びに行っていました。
止まるのは毎年3日程度で、そのうちの1日は必ず山の上に住んでいるひいおじいちゃんに会いに行っていました。
その年も、例年と同じようにおばあちゃんの家で沢山遊び、2日目はひいおじいちゃんの家に向かいました。
ひいおじいちゃんは96歳という高齢でしたが、相変わらず元気そうに庭の手入れをしていました。
その日は、いつもとは違いお昼のみんなでバーベキューをしようという話になり、みんなが準備をしていましたが、私は危ないからという理由で、少し山を登ったところまで虫を探しに行きました。
私が虫を探してあたりを見回していると、「こんにちは」と、優しい声が聞こえたので振り返るとそこには、手押し車をひいて坂を下っている90歳ぐらいのおばあちゃんに声をかけられました。私自身、小心者で返事をしたくても返事が出来ず、それに加え何か嫌な予感がしました。
立て続けにおばあちゃんが「久しぶりだね」「見ないうちに大きくなったね」と言われましたが、私はその人に見覚えはないため、誰なのか聞こうとしたその時でした。
後ろから来た男の人に突然口を手でふさがれ、「こんな遠くにいたのか。そろそろお肉が焼けるから戻ろっか」と言われ、びっくりして顔を見ると、ひいおじいちゃんの家から田んぼ二つ分低い場所に住んでいる、今日のバーベキューの準備も手伝ってくれていたおじさんでした。私はびっくりしながらも、おじさんと手を繋ぎ、後ろを振り返らずにそのまま家に戻ることにしました。ある程度下った時に私がふとおじさんに「おじさんの知ってる人?」と聞くと、おじさんはすこし悲しそうな眼をしながらしゃがみ込んで私に顔を合わせこういいました。
「今日はね。ひいおばあちゃんが死んでから5年経った日なんだ。あの人は子どもが大好きだから。でも知らない人に声をかけられても絶対に話しかけてはいけないよ」と。
数年経ってから分かりましたが、そのおばあちゃんは私のひいおばあちゃんだったそうで、あの日はおじさんの言う通り5回忌でした。例年より少し遅い時期に行きましたがその日がお盆でもあったことから、もしかしたら会いに降りてきちゃったのかもしれないらしいです。今思うと、あの時挨拶を返していたら、今の私はどうなっていたのか。考えると少し怖いです。
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