合わせ鏡のカーブミラー
投稿者:石 (1)
今度は、交差点の向こう側からこっちに向かって、歩いてくる人がいる。まちがいなく犬じゃなくて人間だ。かなり酔っているのかひどくよろついている。近づいてくると、そいつが背広姿のサラリーマンみたいな恰好をしているのがわかった。
四十くらいだろうか。黒っぽいスーツだが、ずいぶんくたびれた安っぽいのを着ているようだ。頭はワックスか何かで後ろになでつけてある。多少髪の乱れているのが、疲れた感じを醸し出している。黒くて丸いフレームの眼鏡。人がほとんどいないからかマスクは外しているようだ。映画に出てくるゾンビみたいにふらついている。どこかで転んだのか、スーツの膝のあたりに泥のような汚れがついているのもすれ違いざまに見えた。黄色い光に照らされて、そいつはよろめきながらもゆっくりと歩き去って行った。
俺はその丸眼鏡でオールバックのサラリーマン風の男を見て震え上がっていた。そいつがゾンビみたいによろよろしているからか。…ちがう。
その男はどう見ても、俺だったからだ。
その後のことはよく覚えていない。ビビりまくった俺は馴染みの飲み屋に入って、酒をあおった。「顔色が悪い」といつもの店員に言われた。そこまでは覚えている。でも、その後は、黄色い光の中で自分そっくりの男に会ってしまったことを無性に忘れたくて、さんざん飲んだからはっきりとは覚えていない。正直言って、どうやって帰ってきたのかも思い出せないくらいだ。
とにかく気がつくと、スーツから着替えることさえせずに俺は自宅アパートのソファに倒れていた。もう十一時をまわっていただろうか。目を覚ますと、家族の者は子供の習い事かなにかでみんな出かけているようだった。
起き上がったときに手のひらと膝が痛いことに気づく。
「アッ…」と言って、俺は絶句した。思い出せないが、俺はたぶん帰る途中に酔って転んだのだ。手のひらと、スーツの膝のところに派手に泥がついている。俺は鳥肌が止まらなかった。
夜中に見たあのスーツ姿の男は、明け方の俺自身の姿だったのではないか。
ただ、何であんなものを見てしまったのか、合わせ鏡に気づいてしまったせいなのか、そのあたりのことはまだ判然としない。
鏡と犬とドッペルゲンガー(?)とかいうなんの脈絡もない感じがリアリティある
写真貼り付けてる話も見たことないし
なぜこれがもっと評価されない?
画像付きは新しいですね!
リアルで面白かった
ここ最近で1番面白かった
変に小説みたいな感じじゃなくて良かったです
合わせ鏡って本当にヤバいんかな…
違う時空に繋がるとか…?
実際にこんなのあるんか
写真見る感じ意味なさそうだけど何なんだろ
気になる
実際現存するんですね。リアルな写真と、話の内容がリンクしゾッとしました。
謎が謎を生む場所。異世界への入り口なのか。それとも・・・。
写真付きはリアルで分かりやすい。
合わせ鏡で時間軸が出来たので?