時間の止まった同級生
投稿者:ナルナル (1)
私が大学を卒業し働きはじめた頃に本当に起こったできごとです。
私の就職先は文化、スポーツ施設の貸館業務をしており、建物内には一般の方が誰でも自由に入れるようになっていました。
仕事は朝8時から夜10時までの間のシフト制で、遅番になると夜10時までの勤務になります。
入社一年目でだいぶ仕事に慣れてきていた私は、その日入社して初めての誰のサポートもない遅番業務でした。
それまでは先輩が一緒についてくれていたのですが、研修も終わり少し緊張していました。
さらにいつもなら残業をしているスタッフが数人いて賑やかで何かトラブルが起きても誰かを頼れるのですが、その日は仕事が捗ったのか、みんな帰ってしまい、静まり帰った事務局に一人だけで遅番業務をしていました。
何事もなく今日この遅番が終わりますようにと思いながら勤務していました。
この施設では、ときどき警備室にいる警備の人が館内を巡回して、館内の落とし物などを届けたり不審者の情報を教えてくれます。
館内は7階までありとても広く死角も多いので昼夜問わず不審者やちょっと変わった人物が館内を歩き回ったりするのです。
その関係でお客様窓口に変な人が来てずっと話し続けたりとトラブルもチラホラありました。
時間が遅くなるに連れてだんだん館内が静かになりかけた頃、警備の人が不審な男女がいたので注意したと報告にきました。
そしてその付近で落とし物を拾得した。ということで2つの荷物が届きました。
一つは黒いビジネスバックもうひ一つは中が見える大きな袋状のバックです。
この施設の利用者が忘れたものなのか、誰のものなのか、個人を特定できるものがないか中を確認するため、まず一つ目の黒いカバンを開けました。
そこには男性の会社社員証とパソコンが入っていました。館内の予約履歴を調べましたが、利用の記録がない人物でした。
連絡先などはなかったためこんな大事なもの忘れて気づかないとは変だなとは思いながら、もう1つのカバンの中を確認しました。
そのカバンの中にはクレンジングや洗顔などのスキンケア用品が入った銭湯に持って行くようなかごと、有名大学の赤本、そしてキャラクターものの巾着袋、着替などがはいっていました…その荷物のうち巾着袋が目にとまり、わたしはそれを手に取りました。
手に取るとその裏には名前が書かれており、それを見た私はドキリとしてとても複雑な何とも言えない気持ちになったのでした。
「〇〇小学校1ねん○くみ さとうみちこ」と書かれていたその袋は微かに見覚えがあり書かれている文字、その学校、クラスその名前えにも見覚えがありました。
その小学校と学年は私が卒業したクラスでひらがなで書かれた名前は当時の同級生のものだったからです。
館内はほとんど利用者も帰り節電のため電気が一部消されておりその静かさが余計になんだか怖い感覚を加速させました。
巾着は小学生のときのまま…わたしはなんだかドキドキしながら巾着を開くと子供用の財布が一つ入っており、中には小学生が遊びで作った身分証カードが一枚だけ入っていました。
私のいた小学校はお受験小学校で私の記憶ではその子はとても頭がよくいつも成績上位でした。
ただ少し変わった子だったのも記憶にあり、低学年の頃仲がよく一緒に遊んだこともありましたが学年が上がるごとに疎遠になり、持ち上がりの中学への入学の頃にはすっかり話さなくなっていました。
何故持ち物が小学生のままなのか、私が落とし物を処理することになったのはたまたまなのか…すべてのことがなんだか不思議で少し不気味でした。
いろんな気持ちで頭がぐるぐるしましたが、ただそれ以上個人情報がなかったので、落とし物として帳簿に記入し不思議のきもちなまま閉館10分前になりました。
私は閉館の準備をするため事務局の奥に入りまだ残っている利用者への館内アナウンスや事務局の施錠など作業していたのですがその時、事務局のお客様窓口のベルがピーピーとなりました。
利用者はすべて帰ったことは確認済みだったのでもしかしてという気持ちでドキドキしながら出て見るとそこには巾着袋の同級生がいました。
大人になっていましたが小学生のときの面影がかなりあり、間違いなく彼女でした。
彼女は、やけにテンションが高く満面の笑みで「館内を散策していたら持ち物がなくなった」というのです。
そして私に気づいた彼女は、「〇〇じゃん!また会ったね私達よく公民館で遊んでるよね?」と不思議なことを言うのです。
色々不気味すぎる
想像を掻き立てられる話ですね