白いワンピース、赤い靴、首吊り一本松
投稿者:玻璃 (3)
これは、私が大学生のときに、アルバイトをしていたお店で実際に体験したお話です。私にとって、人生初のアルバイトだったこともあり、良くも悪くも思い出がたくさんあります。その中でも一生忘れられないような、恐怖の体験をした出来事があります。
当時、就職活動や教習所へ通っていた私は、お金が欲しくて毎週たくさんのシフトを組んでいました。学校帰りの17時から閉店の21時まで、毎日のようにお店で業務をこなしていました。お店は、ドラッグストアと業務スーパーの複合店で、主に接客とレジ打ちを担当していました。日中はお客様で賑わい、店内もとても明るいのですが、夜になると、車通りも減り、お店の裏がすぐ海なため、辺りは真っ暗闇で不気味な場所でした。
ある日、店次長からこんなお話を聞きました。閉店前、陳列棚の前で、通路にしゃがみこんで商品の空箱を組み立てていると、ふと視界に赤い靴が見えたそうです。通路を歩くお客様が、作業中の自分が邪魔で立ち止まったと思った店次長は、「すみません」と端に避けながら見上げたそうです。しかし、そこには誰もいなかったそうです。
また、他の年配従業員からは、こんな話も聞きました。昔、このお店が建つずっと前に、ちょうどお店の裏側にあたる海側に、一本の松の木があったそうです。「首吊り一本松」と呼ばれ、自殺の名所になっており、知人女性もその場所で亡くなってしまったそうです。
このような怖い話が従業員同士で流行っていたある夜、とうとう閉店後の店内で、とんでもない出来事が起こりました。そのとき私は、複数の従業員と、従業員の特権でもある、閉店後の貸しきり状態の店内で買い物をしていました。店内は薄暗く、店長がレジで黙々と精算作業を行っていました。ふと、自動ドアのガラスごしに、外側から店内を覗く人影が見えました。「閉店時間に間に合わなかったお客さんかな」と、周りの従業員たちと話していました。目を離さず観察していると、自動ドアをすり抜けるように人影が入ってきました。白いワンピースを着た髪の長い女性でした。スーッと陳列棚の前を横切り、フッと消えてしまいました。その場にいた全員が凍りつき、「今の見た!?」と大騒ぎになり、私は自転車で来ていたにもかかわらず、怖くて母親に迎えを頼んでしまいました。
あの日、その場にいた全員が見た女性の姿はなんだったのでしょうか。店次長の見た赤い靴や、松の木とはなにか関係があるのでしょうか。大学を卒業し、同時にアルバイトも卒業し、今ではほとんど行くこともありません。
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