夜の帰り道
投稿者:Zazack (1)
これは僕が、学生最後の冬に体験したものです。
その頃、僕は実家から通学していて、バイトが終わって家に帰るのはいつも終電で、駅から家までは自転車を使っていました。
実家はそこそこの田舎にあって、駅の周辺には少し店もあり、道も明るいのですが、駅からちょっと離れると畑や林がひろがり、道をてらす明かりもまばらになってしまうような所でした。
その駅前の明るい所と、暗くなる境界になっていたのが、上を新幹線が走る高架の下をくぐるトンネルでした。
その高架下のトンネルへの道は出口側と入口側が両方ともトンネルに向かって下り坂になっています。
トンネルに入るときは下り坂で楽なのですが、トンネルを抜けると今度は登り坂になります。
自転車では登りでこぐのが面倒なので、トンネルに向かう下り坂では、いつもトンネルを抜けた後の登り坂にそなえて、ペダルをこいで勢いをつけて下っていたものです。
そのトンネルの入口には、一本の街灯が立っていました。
その日も、いつものようにトンネルに向かって、いきおいをつけて下り坂を自転車で下っていきました。
トンネルに入る直前、違和感を感じて街灯にふと目がいったのです。
スピードを上げていたため、よくは確認できなかったのですが、街灯を通り過ぎる瞬間に目に入ったのは、街灯に照らされて立つ、妙に細く、背の高い黒い人でした。
「うわーなんかヤバイものみちゃったかも!」
と、テンション高くなりながら、トンネルを抜けて坂道を登っていきました。
この時はまだ、明日、学校で友人におもしろおかしく話すネタができたくらいにしか思っていなかったのです。
トンネルを抜けると畑や林ばかりになって、急に街灯の本数も減ります。
次の街灯が立っているのは真っ暗な畑の一本道を突っ切った先の分かれ道でした。
しばらく行くと、街灯がみえてきました。
なにげなく街灯の方を見て、真冬にもかかわらず、背中にどっと汗が吹き出しました。
さきほどトンネル横の街灯でみた、黒いモノが目の前の街灯の光にてらされて、同じように立ってたからです。
(見間違いじゃなかったんだ!)
正直この時まで、さっきのは、ただの見間違いと、たかをくくっていたのでした。
道は少し下り坂になっているにもかかわらず、僕はペダルを全力でこいで、猛スピードで街灯の横を通り過ぎました。
家まで、街灯はあと二つ。
もし、最後の街灯までアイツがついてきたら、今日は家に入れない。
もし帰ったら、えたいの知れない何かを家に連れてきてしまうのではと、怖かったからです。
全力で自転車をこいでいるので、ノドもカラカラで、足も悲鳴を上げていますが、恐怖からスピードを落とす事などできません。
つぎの街灯がある十字路が近づいてきます。
(あぁっ、いる!)
全力で自転車をこいでいるため、汗だくになっていましたが、街灯をみて、背中に悪寒がはしりました。
目をつぶって、十字路を猛スピードで曲がり
ます。
正直よく転倒しなかったものだと思います。今思えば、ヤツは僕を転倒させようとしていたのかもしれません。
夜間はライトつけなあかんで!
何年生か知らんけど❗