不思議の国のアリス症候群
投稿者:アマリリス (3)
さっそく着火に取り掛かり、手頃な岩場の上にまな板を置いて調理に入り、水が吹き零れて溢れる飯盒や焦げて炎上しかけた野菜くず等々、楽しく騒がしい時間を過ごした。
私はここまで運転をかって出たDに近寄り、丹精込めて焼いたステーキが乗る皿を差し出す。
Dはボソッと御礼を言うと、皿を受けとる。
「ごめんね、運転任せきりで」
「別にいいよ」
Dは基本的に淡々と話し簡潔に物事を済まそうとするが、だからといって無愛想でも他人に無関心というわけもなく、今回みたいに私達に協力してくれる面倒見の良い性分。
この遠征も嫌な顔せず運転してくれた優しい人間だ。
反対に、私は免許を持っていないから罪悪感がわいて出るが、Dはそのことも淡々と流してくれる。
食事を済ませた昼下り、周辺の散策に出掛けようと意見が一致した。
渓流のせせらぎに沿い、樹木が交錯する入り組んだ自然の中を、まるでアスレチック感覚で突き進む冒険家宛ら散策する。
ほどなくして、苔の生えた倒木が積み重なってできた空洞を見つけ、四人の足並みが自然と止まる。
一見して洞窟と見間違えるその空洞を覗くが、一筋の光もない完全なる闇が広がるばかり。
CとDが倒木の上へよじ登り立ち上がって向こう側を確認するが、どうにも変わり映えのない深緑が続くだけで崖などもないらしい。
では、この空洞は何処に繋がっているのだろう?
まるで結界のように、空洞の境界線から奥が急に真っ暗になって何も見えないのだ。
「ちょっと静かにしてて」
Cが徐に足場から小石を拾い、ひょいと空洞へ放物線を描きながら柔らかく投げ入れる。
意図を察した私達は耳を傾けるが、何かに接触した気配はない。
「なにこれ、どうなってんの?」
A子が興味津々に空洞へ歩み寄るので私は袖を引っ張って制止に出る。
「危ないって」
「大丈夫だって……ひゃあっ!?」
それは誰が見ても完璧なフラグ回収だった。
私に振り返りながら一歩踏み出したA子は、そのまま足を滑らせ空洞へと足先から呑まれるように滑り落ちていく。
私もA子の腕を咄嗟に掴んだものの、頭から飛び込む形でA子と共に空洞へ落ちていった。
後ろから聞こえる男二人の叫び声を置き去りにするように、私とA子はただ暗闇の中へとどっぷり浸かるのだ。
そして、陽射しの眩さに瞬きをして驚きを露にする。
「……あれ?穴に落ちよね?」
A子が不思議そうに私を見やるが、私も周囲を見渡しながら訝しみ、最後に正面の石像を視界におさめる。
念のためA子に確認したが、私達は空洞に落ちた。
それなのに気が付けば陽光が射す大地の上、樹木に囲まれた森林の中で、眼前には年期の入った洞窟があり、その入口の左右に石像が立っている。
ファンタジー読んでるみたいで面白かったです
読み応えがありましたが、本当に不思議な話ですね。
なんか・・・・
こわ・・