”意図”がある黒い汚れのような何か
投稿者:ぐるこ (2)
これはまだ、私が小学校低学年のころのお話です。
離れて暮らす父方の曾祖母が亡くなったという連絡があり、生まれて初めて葬儀に参列することになりました。
父方の曾祖母とはそれほど面識が深かったわけでもなく、まだ幼かったわたしにとっては身内を失った悲しみより、大勢の親族やその友人たちとの対面へのドキドキの方が多かった気がします。
葬儀も無事終わり、後片付けを終えた親戚十数名で残りもののお菓子とお茶で一息ついていたとき、曾祖母と一緒に住んでいた娘さんが「お母さん(曾祖母)が亡くなる前に、部屋の四隅に人がいるって言ってたのよ…なんだか怖かったわ」という話をしていました。わたしは母の隣でその話を聞いていましたが、話の内容を把握できたわけでもないのに、なんだかとても怖くなって母にしがみついて泣いてしまいました。
みんなで集まっているその部屋の四隅に何か黒っぽい汚れのようなものが見えた気がしたのも、いっそうわたしを不安にさせたのだと思います。
四十九日の法要はお寺で行われました。
お坊さんの詠ずるお経、均等に打たれる木魚の音、お香の静かな香り、少し湿った感じのする空気など、その場自体がなにやら異世界のような不思議な雰囲気を漂わせ、わたしの不安や恐怖を膨らませるに十分な環境であったのだと思います。
部屋を移してお坊さんのお話を頂いていたとき、わたしの目には確かにその部屋の四隅にいる何者かが見えていました。黒い汚れのようではっきりとその造形を捉えることができないのに、それに”意図”があることは、なぜか認識できてしまうのです。「得体のしれない何かである」という確証が恐怖となってわたしを襲い、たぶんわたしは大声で泣き出してしまったのでしょう。母親が庭まで連れ出してくれたのをぼんやりと覚えています。
あれが何だったのかわたしにはわかりません。
その3日後に亡くなった親戚と関係があるのかどうかもわからないままです。
もしかしたら、まだ小さかった私が恐怖心から見た幻覚や妄想だったのかもしれません。
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