初恋のおもいで
投稿者:zozowawa (3)
「そこの部屋はな、もう20年くらい誰も住んでないぞ」
頭から冷水をかけられたような気持ちになった。そんなはずはない。1ヶ月くらい前まで、私はこの部屋に住んでいるはずの女の子と遊んでいたのだ。毎日、毎日……
老人は、その部屋に住んでいた住人についての話をしてくれた。
その部屋には母親と娘の2人が暮らしていたらしい。私と似た境遇で、母親が仕事で遅くまで帰ってこない日が多く、娘は1人で公園によく遊びに行っていたそうだ。そう、あの公園に……
だがある日、娘は公園に向かう途中で交通事故に遭って死んでしまったと。冬の寒い日、夕方だったそうだ。それから、母親はショックで行方をくらまし、この部屋は空き家になって、20年経つ今も誰も住んではいない、とのことだった。
「たまにお前さんのような小学生くらいの子がこの部屋の前をウロウロしている気配があってな……気味が悪い」
そう大家は言って、どこかへ行ってしまった。
私はただただ信じられず、女の子の部屋の前で立ち尽くしていた。
つまり、私が公園で遊んでいたあの女の子は、確かにこのアパートのこの部屋の者で間違い無いが、その子は20年も前に亡くなっている……?そしてこの部屋が空き家?そんなことがありえるだろうか。あんなに実体があった女の子がこの世に存在しないなどということは……
ふと、我に返った。なんだか女の子と遊んだ日々が遠い過去、あるいはそんな出来事は無かったように感じたのだ。
「帰ろう」
そう呟いて一歩踏み出そうとした時、どこかしらからオルゴールの音色に乗せて、歌声が聞こえてきた。
曲目は
「きらきら星」。
怖いです。
女の子のご冥福をお祈りします。
少し怖くて切ないお話ですね
読めて良かったです