沖縄旅行で行ったある防空壕での話
投稿者:湯豆腐 (1)
今から15年ほど前、母と二人で沖縄旅行に行った時のことです。
当時は何でもインターネットで調べる時代ではなかったので、事前の計画立ては旅行ガイドなどの情報誌を頼りましたが、当時私は沖縄出身の人と交際をしており、観光客が行かないような穴場スポットを事前にいくつも教わりました。
ガイドブックに載っていないようなソーキそばのお店や海がきれいに見える場所等、地元の人しか行かない場所を母と二人で堪能しました。
その中の一つに、アブチラガマがありました。
アブチラガマは、沖縄本島南部の南城市玉城字糸数にある、全長約270mの防空壕です。
沖縄はかつて、日本軍とアメリカ軍が戦争をした場所。地上戦が行われたという辛く悲しい過去があります。
沖縄には数えきれないほどの防空壕がありますが観光地化されている箇所もあり、明かりが灯っていたり道が整備されていたりしていますが、アブチラガマは違って、当時のまま残っている場所だそうです。
私にここを教えてくれた当時の交際相手が昔そこに行った時の話だと、中は本当に真っ暗で、自分が行った時には下に注射器などの医療器具が落ちていて、冗談抜きで怖い場所だったそうです。
私と母は、沖縄に行くからには海とか水族館とか楽しい場所だけじゃなくて、当時の戦争のことを肌で感じられるような場所にも行きたかったので、ちょっと怖かったけど旅行に組み込みこんだのでした。
そして、沖縄旅行も終盤に差し掛かり、ついにアブチラガマに行きました。
何やら建物を発見したので中に入ってみると、資料館のように少しだけ資料があって、受付がありました。
チケット売り場として大きくあるのではなく随分こじんまりして、大々的な観光地とは明らかに雰囲気が違いました。
受付で言われたのが「本当に大丈夫ですか?もし無理そうなら戻ってきてください。入場料はお返ししますので」
という言葉でした。そして、懐中電灯を一人一本渡されました。
受付の二人は心配そうな顔をしていました。
私と母は、せっかくここまで来たので行ってみることにしました。
少しだけ歩いたあと、入り口に到着しました。
地面に穴が開いています。先は見えません。
そして、岩が剥き出しになっているゴツゴツの段を降りていくようになっていました。
二人で少し尻込みした後、私が先に入りました。母は後ろで不安そうに見守っています。
一段の高さが膝くらいある岩をゆっくり慎重に降りました。母はついてきませんでした。
そして、下に降り立った時、サッと何かが体を通り過ぎる感覚がありましたが、私はなるべく気にしないようにしました。
入り口からの光は、私の背中までしか届いておらず、中は真っ暗です。受付で手渡された心もとない懐中電灯でゆっくりと辺りを照らしてみました。
思ったよりも中は広く、反対側の遠くの壁をなんとなく照らしましたが、暗い中にぼやーっと照らされた光は、何も写していない、という感じでした。
そして、私は降り立った瞬間から何かに見られていました。無数の何か(誰か)に見られているような、「何しに来たんだ」と全方位から睨まれているような感覚がしたのです。足がすくみました。怖いというよりも、しまった、という感覚でした。
咄嗟に、「ごめんなさい」と思いました。
ここは、私たちが入っていい場所じゃない。沖縄旅行でオススメされたからってなんとなく来ていい場所じゃないんだ、お邪魔してごめんなさい。
上から「ねえ、大丈夫?」という不安そうな母の声が聞こえました。母は入るのを躊躇しているようです。
「あーー、、、うん。とりあえず戻るね」
と母に声を掛け、私はすぐに降りてきた岩の段を登り、外へ向かいました。
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