ひとりでに揺れ続ける不思議なブランコの話
投稿者:塁 (4)
ゾッとするような怖い話、というよりかは、不思議だなぁくらいのお話なのですが、数年前、中学生だった私が、父と夜に散歩をしていた時の話です。
晩御飯を食べ終わって、夜のおやつにアイスでも買おう、とコンビニに向かった帰りのことでした。
普段は通らない道なのですが、突然父が「こっちの道から帰ってみよう」と言い出しました。
いつもは見ない景色に少し心を踊らせて、すぐに了承しました。
裏道とも言えないような、木々に囲まれた小道なのですが、隣にはずっと小学校のフェンスが続いていて、怖いような道ではありませんでした。
夜ということもあって勿論無人ですし、自分が通っていた学校でも無いのですが、なんだか小学校の生活が懐かしく思え、父と2人で小学生の頃の思い出話に花を咲かせていました。
しばらく歩いていると、道が少し開けたところに、公園の入口がありました。
小さくてしっかり手入れされた植木に囲まれた、小さな公園です。
座り場が2つならんだブランコと、砂場があるだけのこじんまりとした公園でした。
出入口はひとつしかなく、公園の向こう側には住宅が並んでいました。
公園に近づくと、キィ、キィ……という、金属が擦れる音がしました。
こんな夜中に公園で遊んでいる人が?
と不思議に思ったのですが、覗いてみると公園は無人です。
そして、2つならんだブランコのうちのひとつが、キィ、キィ、と音を鳴らしながらひとりで揺れているのです。
先程も書いた通り、出入口はひとつしか無く、一本道ですから出入りがあれば絶対に気付くはずなのです。
しかし人の出入りはなく、ましてや夜中にひとりでブランコに乗る人などなかなかいないでしょう。
人の話声等も全く聞こえませんでしたが、その時は
「だれかが乗っていたのかな?」
と思っていました。
しかし、ブランコを取り囲む柵に腰をかけて2人でアイスを食べていると、すぐに違和感に気が付きました。
ブランコが揺れる幅がずっと変わらず、何分経とうとも同じ間隔で同じだけの揺れ幅で揺れているのです。
本当にそこに誰かが座って、漕いでいるようでした。
30分ほどそこに座っていたかと思いますが、その間ずっと揺れ幅が小さくなったりすることはありませんでした。
不思議なもので、その時は怖いという感情が無く、誰かが漕いでいるんだな、という感想でした。
何故か父と2人で無言になり長いことブランコを眺める、という奇行をしていたのですが、その間本当に怖いという感情は一切ありませんでした。
もしかしたら、良くないものでは無かったのかもしれませんね。
個人的に幽霊という存在は信じているような信じていないような、どこかにいたら面白いな、でも実際見たら怖いよなあ、くらいでしか無かったのですが、何故かその時は怖い、よりも微笑ましいような、そんな暖かい気持ちの方が強かったです。
そろそろ帰ろうか、と父が腰を上げたので、私も後に続きました。
心の中でバイバイ、と挨拶をして公園を後にしましたが、公園から離れるその間もずっと、キィ、キィ……という金属の音はなりやみませんでした。
今のは何だ?という感情が湧いてきたのは、家が見えてくるところまで歩いて来てからでした。
父も同じようで、興奮した様子でブランコの話題を振ってきたのは家が見えてきてからでした。
怖いような感じではなかった、という私の感想に父も賛同していたので、本当にただ遊びたかった何かがいただけなのだと思います。
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