髪、呪い
投稿者:あかり (7)
知人の話になりますが、…知人は三十路の会社員男性です。去年の12月のことでした。
最近やたらと体が疲れるなぁ、とか、運がないなぁと思うことがあったそうです。常にだるく、出先で転んだり、人違いで見知らぬ人に怒られて叩かれそうになるなど、とにかく不調でツイていない。
体調に関しては冬になり、寒くなったからかな、と深く考えてはいませんでした。運の悪さに関しても、たまたま悪いことが続いているだけだと思っていたそうです。
男性には妹がおり、普段は男性は大阪、妹は東京で一人暮らしをしていました。仲はよく、イベントや仕事でお互いの住まいに近いところへ行く機会があれば、会ってご飯を食べるほどです。
ある日、妹が推しのイベントが大阪であるからと泊まりに来ました。男性の部屋に入った途端に言ったのです。
「お兄ちゃん、ポスト見た?」
男性の部屋のドアの中にポストがあるタイプで、妹は顔を顰めながらポストの方を睨んだのです。
「何だよ急に」
突然変なことを聞くな、と返事したものの、そういえば…と久しくポストの中を見ていないことに気付きました。元々ズボラな性格なこと、最近忙しいかったこと、体調不良でそれどころではなかったこと。思えば最近、こまめにポストを見ることはありませんでした。
「お兄ちゃん、体調悪いって言ってたよね?」
立て続けにそう聞かれ、真剣な妹の顔を笑うことも出来ず、素直に頷きました。
「そこのポストがなんか嫌な感じする」
抽象的でしたが、妹は昔から勘が良く、霊が見えるわけではありませんが、そういった気を感じることが多い子でした。兄もそんな妹を信じて、恐る恐るポストに手を入れました。
そこには1枚の白い封筒。いつの間に入っていたのか、差出人も不明で何も分からないまま開けてみることにしました。
「うわっ!!」
思わず大声を上げてしまいました。妹もぎょっとした目で見ています。
「これ…」
封筒から出てきたのは黒髪でした。長さはバラバラのもので、まさか髪の毛が入っているなんて思っていなかったので、男性の汗ばんだ手にべっとりついてしまいました。
気持ち悪くなりながら、男性が封筒に紙を戻していると、
「お兄ちゃんさ、最近女の子となんかあった?」
「え?」
妹は封筒から何か、を感じ取ったのかそう聞いてきました。男性には彼女がおらず、ピンとくるようなことはー…、
「あ」
そういえば、と男性の脳内に蘇ったのは1ヶ月ほど前のことです。
職場の後輩である女性から告白されていたのです。今は仕事に集中したいこともあり、男性はきちんと断ったつもりでした。その女性とは告白後も一緒の職場で働いており、特に何か言われたわけではありませんでした。もちろん家の場所も教えていません。
しかし男性はそのことしか思い当たりませんでした。
「告白された、職場の後輩に…でもちゃんと断ったし、その後だって普段通り過ごしてるよ」
何か女性を逆撫でするようなことをしてしまった、そんなことは一切思いつきません。だからこそなぜ、彼女がこんなことに関わっているのか謎でした。
「明日にでもお祓い行った方がいいよ」
妹にそう言われ、半信半疑で翌日、お祓いに行ったそうです。
呪いって意外と簡単にできてしまうのか・・・?