不思議な印鑑屋さん

20代くらいの時のことです。
私はその頃、何をやっても気持ちが晴れずにまるで頭の上に黒雲が立ち込めているようでした。
死にたいとは思わないのですが、結婚もしておらずもちろん子供もいない。私がもし死んでも両親は悲しむかもしれないが、困る人は誰もいないし必要のない人間なのではないか？そういう気持ちで毎日を過ごしていました。

そんな時、名古屋の印鑑屋さんで色々なものが視える人がいてその人に会ってとても良かったと同級生の男性から聞かされました。
この手の話、男性が良かったというの言うならば信憑性があると思い藁にもすがる思いでそこまで行きました。

その印鑑屋さんは修行で徳を積むためにやっているので料金は一切取らないとのことでした。
会って早々に「現在求職中で、彼氏もいない。この先自分はどうなるのか不安だ」と相談したところ、「とても良くないものが憑いている。それがどんどん小さな悪いものなどを引き寄せて大変なことになっている。光が全く見えず将来のことなど一切見えてこないが自分は視えるだけで払う力がない。」と言われ絶望。

しかしここからが不思議なのですが、翌日から私はタイにいく予定をしていました。その方との話の流れから、若い頃バックパッカーでタイにも深くご縁があったと教えてくれて「あ！そうだ！タイに憑き物を落としてくれる力がある仏像があった！そこに行けば取れるかもしれない。」とその仏像の歴史の話をしてくれたのですが、そのお寺の名前が思い出せないと言われました。

たまたま私がタイで会う約束をしていたのが、留学時代に知り合ったお友達で既にタイに移住しておりタイに精通したお友達もたくさんいる人で、調べてもらったらそれらしきお寺がわかりました。

旅行中に時間を捻出してお寺に出向き、必死でお願いして帰国しました。
旅行で気分転換になったこともあると思いますが、晴れ晴れと日の光が差すような気持ちでした。

帰国して印鑑屋さんにお礼にお菓子を持って尋ねたところ、めちゃくちゃ綺麗になっている！全部悪いものが落ちているから大丈夫だよ！
と言われました。それからは死んでも誰も困らない・・・という気持ちになることはなくなりました。
確認する術はありませんが、もしあのまま放置していたら、今私はここにはいないかもしれません。