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不思議体験

ベルベットGさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

偶然を繋げる小さな出来事
長編 2021/11/30 08:08 1,750view

ちょっとした偶然ということを体験する機会は何度かあるかと思いますが、意外に記憶に残る事は少ない場合が多くないでしょうか。その時からしばらくは鮮明な記憶と共に経緯が残る事はあると思います。しかし、人に話す機会や日記に残すなどくり返し思い出す機会がなければ忘れてしまう事の方が多そうですよね。

私の場合は特に記憶に留めることが苦手という事もありますけど。人に話したくなるような事が起こっても、なかなか話をする相手がいないこともあり、気が付けば忘れてしまう事の方が多かったと思います。そんな私が今でも大事に覚えている思い出の話が少し不思議な体験でしたので、ご紹介をさせて頂きます。

私が大学を卒業して、今の会社に勤めて経験してきた中での話です。
当時、新人だった私には仕事のノウハウを指導して頂く男性の先輩社員がいました。この場ではAさんと呼ばせて頂きます。

Aさんは入社して4年目となり、途中入社でありましたので年齢は私より6つ上の28歳でした。
性格は明るく、人当たりのよい体育会系の先輩で、私への後輩指導に関しても段取りをしっかりと組んでくれるような面倒見の良い方でした。

お酒も好きなので、半年が過ぎた頃には週末は一緒に飲みに出掛けるのが恒例になっていたのは楽しい思い出です。
他の部署の先輩や同期、時には上司の方も集まってテーブルを囲むことも多く、先輩は中心に近い位置を取る方だったと思います。

私はどちらかというと、先輩や上司陣と会社の未来や現在の働き方を語り合うのが苦手だったので同期と隅の方に席を取ることが多かったのですが、お陰で社内の色々な方との繋がりを作ってくれる方でした。
職場も部署は異なれども交流があり、一体感のある場所で長くこの場所で働いていきたいと考え、充実していたと思います。先輩も社内の中でしっかりと高い評価を受けておりましたので、順調にステップアップをしていくのだろうと当時の私は予想していました。Aさんの下で自分も後輩を育てつつ、会社に貢献できるようになっていくのだろうと考えていたと思います。

しかし、私の思い通りに人の人生が進むわけもなく、その日は突然やってきました。
入社をして3年目をもうすぐ迎えようとしていた時期だったと思います。

雪が降るような時期は去ったと感じ始めた頃だったと思います。
恒例の週末飲み会にAさんと行った時のことでした。いつも通り生ビールを2~3杯飲んで、今週の仕事に関して話を一通りした後のことだったと思います。

Aさんから「俺、会社を春に退社するわ。部長とも何度か話をして、3月末で退社する事になったんだ」と。突然の報告に情報が頭に入ってきませんでした。
そんな私に気づかず、Aさんは話を続けました。

正直、その時、正確に話して頂いた内容は頭に残っておらず、記憶の断片と、その後に何度か聞いた話をつなぎ合わせてAさんの説明は次のような感じでした。
Aさんには実家で経営されている工場があるそうです。お兄さんが跡を継いでいく予定だったそうですが、お父さんの希望で兄弟と一緒に親子で働きたいと考えておられたそうです。

Aさんも30歳を超えたばかりで、挑戦するか、断るかを決断するタイミングだったそうです。
今の職場もやりがいがある上、キャリアアップも描けていただけにとても悩んだ事を話していました。

では、きっかけは何だったのだろうか。
それは1冊の経営学の本だったそうです。

Aさんはその本に書かれていた「自分に出来ることを伝えたならば、それは自分以外でも出来ることになる。これをくり返したらいつか自分しか出来ない事はいつかなくなるかもしれない。だから自分しか出来ない事をやり続けるために挑戦をする方がいい。」というようなメッセージがAさんに響いたそうです。

私を含めて、同僚となる社員達に指導も行い、プロジェクトの立ち上げなどを行う事を行っていき、Aさんが10年後に目指す働き方が思いつかなかったそうです。「バトンを渡すから、会社の為、後輩の為、代わりに頑張ってくれ」と肩を叩かれたことはしっかり覚えています。

そんな話をしてからAさんが退社するまでの期間は、本当にあっという間に過ぎていきました。
たくさんの事を指導して頂いたAさんに感謝をしつつ、新しい門出を見送りました。

そして次の日からもAさんは職場にいませんが、いつも通りの私はその後、転職などを考える事もなく自分なりに仕事の幅を広げ、その後も2年、3年と仕事を続け、気が付けばAさんが退社をした年齢と同い年になる春を迎えようとしていました。

そんな時に中途採用にて入社する社員を迎える事になりました。新卒ではありませんので、年齢は26歳の新人社員でした。年齢的な差もあり、私が指導担当をすることに部署内で決まり、私もある程度、会社の仕事に余裕を持っておりましたので引き受ける事にしました。

彼をBさんとこの場では呼ぶことにしますが、資料上でしか知らないBさんの入社当日を迎え私も少し緊張していたと思います。
最初の印象では、細身の長身でおとなしそうな印象でした。簡単な挨拶を交わし、その後は業務を説明していきました。

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