雨の日にやってきた赤いハイヒールの女
投稿者:ちゃご (3)
突然ですが、皆さんは幽霊の存在って信じますか?
「怖い話やホラー映画などはよく見るけど、本当にそんなことがあるなんて思えない」「幽霊なんて科学的に証明できない存在を信じるわけが無い」そう思っている方も多いのではないでしょうか??
実際、私も数年前までは幽霊の存在を全く信じていませんでした。自分で言うのもなんですが、理屈っぽい性格の私には自分で見たことも無いものを信じることなんて出来なかったのです。
これは、そんな私に実際に起きたある不思議な体験です。
小さい頃、私は身体が弱くしょっちゅう風邪を引いていました。キャリアウーマンだった母が心配して仕事を辞めてしまうこともありました。
そんな私ですが、小学校高学年になった頃にはめっきり風邪を引くこともなくなりました。その頃から水泳を習い始めたり一輪車クラブに通ったりしていたので、運動で免疫力が上がったのかもしれません。
母も無事職場復帰を果たし、平日は朝から晩まで仕事に出かけるようになりました。当時は学童がありましたので、私は学校が終われば友達数人と学童でおしゃべりし、帰ってからは家で1人ご飯を食べてお風呂に入る、そんな生活が当たり前でした。母は20時頃に帰ってきたら、その日あったことを少し話して自分の部屋で眠ります。
私は一人っ子でしたから1人には慣れていましたが、ご飯やお風呂は1人では寂しいものです。なので母が帰ってくると嬉しくて、ついついおしゃべりに花を咲かせてしまうのでした。そんな私の話を嬉しそうに聞いてくれる母が大好きでもありました。
ある日、いつものように学校から帰って食事と入浴を済ませ、何となくテレビを付けて母の帰りを待っていたのですが、おかしなことに20時半を過ぎても母が帰ってきません。
その日は雨が降っていたので、電車が遅延しているのかもしれない、あるいは仕事が長引いてしまったのかもしれない、と思い待ってみましたが、21時を過ぎても帰る気配はありません。残念でしたが私は先に眠ることにしました。
うとうとしながら目を瞑ってしばらくした頃、遠くからコツ、コツとハイヒールの音がしました。最初は母が帰って来たのかなと思いましたが、不思議なことにその音は玄関前でずっと鳴っており、一向に家の中に入ろうとはしません。外は土砂降りの雨。
何かがおかしいなと思ったその時、背筋が嫌な感じにゾワゾワっとするのが分かりました。霊感なんて一切ない私ですが、直感的にこれは母の足音ではないと分かりました。「これは何かがおかしい。絶対に自分が相手に気づいたとバレてはいけない」と思ったその時、目の前に赤いハイヒールを履いた足が現れました。
ですが冷静に考えて、そんなことは有り得ません。だってさっきまで足音は玄関前で鳴っていたのです。これは本格的に見ては行けないモノに遭遇してしまった。そう思った私はあまりの怖さにぎゅっと目をつむってソレが立ち去るのを待ちました。
しかし、気配は一向になくなりません。それどころか相手がじーっと自分を見つめているのが分かります。
視線はどんどん熱くなり、相手の顔が横になっている自分の顔の間近に来ているのが分かりました。
どうしようどうしよう。逃げようにも身体が固まって動けません。
ただどうすることも出来ず恐怖に震えている私は、その音を聞いてしまいました。
「たすけて」
それが声だったのかどうか、それとも直接的に脳に聞こえてきたものだったのかどうか分かりません。
しかし私にはハッキリと、しわがれた声で紡がれた言葉が聞こえてしまいました。
ああ、終わった。大変なものと出会ってしまった。
依然として固まる身体でただ絶望していました。
その時、玄関の扉が開く音が聞こえました。
「ただいまぁ」
母が帰ってきたのです。
その瞬間、今まで間近にあったあの気配がふっとなくなり、身体が軽くなりました。
あまりの恐怖に声も出せず呆然としていると、母がやってきて話を聞いてくれました。
安心と恐怖と。半泣きで今あったことをまくし立てる私を見て、母は少し青ざめた顔をしていました。
私は当時八王子に住んでいたのですが、近くの公園で昔、若い大学生が不倫関係にあった大学の教授に殺されるという事件が起きていたのです。今でも検索すれば出てくる八王子の心霊スポットなのですが、当時はそんなことは知らずに毎日のようにその公園で遊んでいました。
そしてその女性はブランド物の赤いハイヒールを履いていたといいます。
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