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心霊

小秋さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

真夜中の公園のブランコに
短編 2021/11/16 23:03 1,308view

30年以上前、私が高校生だった頃の話です。友達と二人で夜11時ごろ近所を自転車で何往復もしていました。話が尽きなくて同じ道をグルグルと回っていたのです。
都内外れの住宅街で、そんな遅くにベラベラとしゃべっていたのですから、さぞかし近所迷惑だったでしょう。

私たちもさすがに疲れてきたので、「そろそろ帰ろうか」と目の前にある公園の時計に目をやりました。

「あれ?」二人とも声に出さずに時計の下のブランコにくぎ付けになりました。
「ブランコが揺れている!」
余りに異常な光景に、じーっとブランコを凝視していました。

「ママかパパが近くにいるのかなぁ?」と友達が言ったので、「やっぱり幻じゃないんだ!」と私は思ったのです。

何故かというと、ブランコに小さな女の子が乗っていたからです!誰かがいたずらで人形を置いたのかと思い、二人で良く確認しましたがどう見ても4,5歳の女の子です。二人とも視力が1.5なので間違いありません。髪が肩につくくらいのおかっぱ頭の女の子です。えんじ色のセーターかトレーナーを着ていたのも見えました。

もう一つ不思議だったのは、女の子の足が見えないことです。足を前に伸ばしているから見えないのかとも思いましたが、ブランコは揺れているので見えるはずです。

私たちは急にこの状況に恐怖を覚え、その場から一目散に逃げました。その日からその公園の前を通れなくなってしまいました。

そんな記憶も薄れてきた数年後のこと。地元の本屋さんで立ち読みをしていると、着ていたトレーナーをキュッキュッと引っ張られました。振り返ると小さな女の子が私を見上げて「お母さん」と言ったのです。「お母さんとはぐれちゃったの?」と言おうとしたその時あの公園の出来事がフラッシュバックしました。

「おかっぱ頭で、えんじ色のセーターを着たあの子だ!」と、とっさに思いました。この後の女の子の行方がどうだったか何故か記憶がないのです。今思えば追いかけてみればよかったのですが、放心状態になっていたのかもしれません。

数年後、祖母が亡くなり遺品整理をしていた時1枚の写真に目がくぎ付けになりました。あのおかっぱ頭の女の子です。母に「この子は誰?」と聞くと「お姉さん」とポツリ。実は母には腹違いのお姉さんがいたのです。

祖母と祖父は離婚し、母は祖母と、お姉さんは祖父と暮らしていたそうです。別れるとき、お姉さんは泣き叫んで行きたくないと言ったそうです。祖父はだらしない人でお姉さんは育児放棄されていたようなのです。育児放棄が原因かわかりませんが、お姉さんは幼くして突然死してしまったそうです。
祖母と母はトラウマになっていたせいか、お姉さんについて話さなくなっていたようです。

なぜ母のお姉さんが私の元に現れたのかわかりません。母が言うには私が母親になれる年齢になったからだと言うのです。お姉さんは私の子となって生まれ変わろうとしていると。残念ながら私は子に恵まれませんでした。
お姉さんは今もこの世をさまよっているかもしれません。

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