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妖怪・風習・伝奇

礎吽亭雁鵜さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

理想の顔の女が祀られている
長編 2026/10/19 12:50 145view

うちの実家が管理しているお社の話をさせてください。
まあホラ話とでも思って軽く聞き流していただければ幸いです。

私の実家は結構な田舎なのですが、土着の神なのかよくわかりませんが何かを祀っているお社が山の中腹にあります。

そのお社の管理は少なくとも曾祖父さんの代からうちの実家が担当していて、今は父が責任者、私が補佐のような感じです。
ただ私は東京の大学に通っているのでお社の管理は長期休暇などを除けば父に任せっきりになっています。
本当はもっと私もお社のお世話をしたいんですけどね。

まあ管理といっても神事的なことはしません。
お掃除ボランティアを集めたり、近隣住民から修繕費の寄付を募ったり、割と実務的なお仕事なのです。

お掃除を手伝ってもらっていることからわかる通り、お社の敷地内には誰でも自由に入ることができます。
ただ管理者と補佐の者だけがお社の本殿に入る鍵を持っており、その他の人は自由に入ることはできません。
別にバチが当たるから入れないとかではないのですが、管理してる側としては入り浸るような者が現れても困るので仕方なく鍵をかけているのが現状です。

私が物心ついた頃は祖父が管理者でした。
祖父は孫の私の目から見て、とても真面目な人でした。
しかし親族の集まりなどでお酒が入ると祖母は、「昔は祖父は女遊びがひどくてよく泣かされてきたが、お社の管理をするようになってから人が変わったかのように女遊びをやめた、ありがたいことだよ」とこぼしているのを聞いていたので、お社の管理はきっと楽しいものにちがいないと思いました。

そこで私はある日祖父にお社の管理はどれほど楽しいかと聞いてみました。
祖父は「お社の本殿にはな、とびきりめんこい女の神様がおるんだよ。あんなめんこい女は見たことがない。おじいちゃんはその人に会いたいから毎日掃除に行くし、粗末なお社には住まわせるのは不憫だからしっかりとお社の手入れをしているんだよ。大きくなったらおじいちゃんと一緒に会いに行こうな」
「でもおじいちゃんにはおばあちゃんがいるでしょ」
「愛してるのは婆さんだ。でもな、めんこいと思うのはあの神様なんだ、まだわからんかもしれんが、別の話なんだ」

結局自分が大きくなる前に祖父は亡くなったので、一緒に会いに行く機会はなかったのですが、中学生になったころ父に連れられて補佐として本殿に入ることになりました。

父が本殿の鍵を開けて2人で中に入ります。
昼間とはいえ明かりは入り口から入ってくるわずかな日光だけですのでかなり暗く、父は蝋燭に火を灯してくれました。

本殿の奥には御神体として一枚の鏡が祀られていました。

「爺さんはこの鏡にきれいな女性の神様が映るんだと言っていたけど、お父さんには見えないんだよな」
「めんこい女の神様がいるって言ってたけど、そういうことなのか」
鏡をマジマジと覗き込みます。
そこには絶世の美女が映っていました。
服装こそ白い着物で神様然としたものですが、そのお顔はまるでトップアイドルのように整っています。
小ぶりな卵型の輪郭に、ぱっちりとしたアーモンド形の目。緩やかな曲線を描く眉と、細くすっきりした鼻筋。自然な丸みを帯びた頬に、形のよい薄いピンクの唇。
理想の顔というものを具現化したかのような完全な美がそこにいました。
「父さん、僕見えるよ・・・めちゃくちゃ美人な神様が映ってて、微笑んでる」
「おお、お前には見えるのか!よかったな!父さんも拝謁したいものだ」
そう言いながら父は私の言ったことを信じているのかいないのかテキパキと掃除を進めています。
逆に自分は鏡の中の女神が気になって何も手につきません。
父に肩を叩かれて帰るぞと言われるまで鏡を凝視していました。

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