地元のR20号線にあるE峠には、昔魔のカーブと呼ばれる場所があった。
実際、年に何件かは事故が起きていたらしい。今でこそ街灯も増え、近くにあった古びた病院もとうに廃業して更地になった。今では、ただの危ない急カーブという印象しかない。
だが昔は違った。
あの場所には、
「僕はこのカーブで死んだ」
と書かれた看板があるらしい。
そんな噂が広まり、一時期クラス中が騒然となった。私も気になって仕方がなかった。
だが当時は小学生で、その場所は自宅から二十キロほど離れていた。
家に車もなく、自分の目で確かめに行くことはできなかった。
その話題が出てから、親の車で現地を通った同級生たちが口々に言った。
「夜になると、赤い文字が所々欠けたように浮かび上がる。あれは本当に気味が悪い。」
しかも妙だったのは、欠けていたという文字が聞く度に少しずつ違っていたことだ。
まるで看板そのものに、意思でもあるかのように。夜に浮かぶのは夜光塗料だったのかもしれない。だが、わざと欠けて見える様に塗られていたのかどうかは分からない。
以降、高校卒業迄地元にいたが その話を耳にしたことも話すことも無く次第に記憶から薄れていった。
社会人になり車を持ち、初めてE峠に差し掛かった時、そういえば…と当時の記憶が頭をよぎった。だが峠を走行中、看板を目にすることは無かったのである。
撤去されたのか、私の聞いていた場所が違ったのか、それすら分からない。
結局私は、その後もあの看板を生で見ることはなかった。写真や地元紙の記事すら、目にしたことはない。
そして忘れもしない三年前の夏、久々の同級会で、ふと思い出したようにその話を口にした。だが妙なことに、あれだけ得意げに話していた連中含め、誰一人覚えていなかったのだ。
更にはその看板すら知らない様子で「昔見た夢が年数かけ現実になったってか(笑)」。
え? そんな馬鹿な!
全て夢のはずがない。そう言いかけた瞬間、皆が同じ笑顔のまま、ぴたりと止まった。まるで人形みたいに…。
背筋が凍った。
まさか、あの頃車もない私だけが見に行けないのを知ってて皆で存在しない不気味な看板の話で担いだのか。
そう考えれば辻褄が合う。いや寧ろそうであってほしい。嘘に違いない。そう自分に言い聞かせ作り笑いで返すのが精一杯だった。
しかし後日、何気にあの文言をYahoo検索すると「僕はこのカーブで死んだと書かれた看板」の記述が2件ヒットした。場所も同じE峠。
こ、これって正に……。
あの看板は実在したのである。
そして、
今もどこかで「僕」がヒットする。























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