ある日夢を見た。
その日は何でもない、普通の日常だった。
今思えば、普段より気分が優れなかっただろうか。
今思えば、普段より体調がよくなかっただろうか。
僕の悪夢は、その日から始まった。
いや、悪夢はもともとその辺にあったけど、僕が拾ってしまっただけかもしれない。
真っ暗な世界が広がっている。
何やら、土埃が舞ったような匂いと、生臭い汚物のにおい。
そして、何百何千という男の大人たちの悲鳴と雄たけび。
ただ僕は、見えない。
上を見ても横を見ても、視界は真っ暗のまま。
ただ、聞こえて、匂うだけ。
最初からそこにいたけど、意識だけが急に自分のものになったような感覚で、僕一人が取り残されている。
ふと何の前触れもなく意識が途絶え、そして、夢から目が覚める。
この夢から目を覚ますと、決まってベッドが汗でべっちょり濡れている。
しかも、体調も悪い。
毎日見るわけでもないし、特別怖い思いをするわけでもないが、これは悪夢に分類される夢だろうと本能が言っている。
重い体を起き上がらせ、大学へ向かう準備をする。
鏡の前で準備をする僕の顔は、まるで死人のようだった。
目に見えて体調が悪いのがわかる。
ただ、大学もサボりがちで単位もまずいので大学にはいかないといけない。
大学への進学を機に、都内に借りた1Rの家賃を払うの為にも、最近できた彼女にクリスマスプレゼントを買う為にもバイトに行かないといけない、なんだか億劫だ。
外に出ると、都内では珍しく昨晩雪が降ったのか、地面がうっすらと白かった。
吐息も白く、口に手を覆い、息を吐き、温める。
「拓真おはよっ!」
アパートを出てからすぐの交差点で、深緑のコートを着た、女子アナにいそうな女の子が満面の笑みでこちらに手を振っている。
「香菜おはよう」
香菜は大学生になってから、僕にできた彼女だ。
僕のコートの中に、左手を入れてきて、僕とコートの中で手を繋ぐ。
僕たちは足早に、大学へ向かった。
4月に晴れて念願の大学生活をスタートし、皆が羨ましがるような彼女もできた。
僕の生活はとても順風満帆だ。























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