ただ、あの夢を除いては。
僕があの夢を見たのは、今のアパートに住み始めてしばらくしてからだった。
大学の近くで、できるだけ安く、かつ事故物件ではない物件を探し今の部屋に住んでいる。
近隣の建物と比べると、相場より家賃が安いので不安になり、管理会社にも大家にも何度も事故物件ではないか、過去に自殺や事件はなかったか何度も確認したが、特に該当はなかった。
初めての引っ越し作業も終わり、ようやく新居での生活に慣れてきて、約半年が経とうとしたとき一つ気になることができた。
ボトッ
天井裏から、物音がする。
毎日ではないが、音が鳴るのは決まって夜中。
硬くも柔らかくもない、水の入ったペットボトルが床に落ちるような鈍い音がするのだ。
上の人の生活音かと思ったがそれはあり得ない。
僕が住むアパートは2階建てで、僕の部屋は201号室。
つまり最上階の部分にあたる。
特段気になると言わけではないが、建物も古いし老朽化などで鳴っている音だったらやだなと思い、翌日大家に電話することにした。
大家は、高橋さんという60代程の女性でご夫婦で営んでおり、このアパートの1階部分に住んでいる。
2階部分の4部屋を、賃貸として貸し出しているらしいが入居人はすべて学生らしく、どうやら高橋さんには、大学受験で苦労したお子さんがおり、できるだけお金のない大学生にの力になりたいということで、90年代に自宅アパートを改装し、以降賃貸として貸し出しをしているらしい。
実際、高橋さんには引っ越し祝いに色々頂いたり、大学帰りに声をかけてもらって高橋さん宅で何度か食事を振舞ってもらったこともある温かいご夫婦だった。
大学の休憩中に高橋さんに電話をすると、高橋さんは優しい実母のように教えてくれた。
賢い害獣たちは断熱材が入っている天井裏を求めて、狸や鼬が入ってきてしまうことがあるという。
高橋さんに気になるようなら害獣駆除の業者を呼ぶかと聞かれたが、音の原因がわかってしまえばそこまでだと思い、僕は天井裏の鼬か狸と、同棲をすることにした。
22時を回ったころ、バイトを終えてアパートについた。
軽い夕食を済ませシャワーを浴び、リビングでスマホをいじっていた。
時刻は深夜1時を回ろうとしたとき、天井裏からあの音が聞こえた。
ボトッ
(またか。。。)
夕方、高橋さんと話したこともあり、さてさて狸かな?鼬かな?と点検口から天井裏の同居獣を覗いてみることにした。
「ん?なんだこれ?」
点検口を開けてみるとそこに、害獣の姿はなく、ギリギリ手の届くところに1枚の紙が落ちていた。
手に取ってみてみると、どうやらA4サイズのコピー用紙のようだ。
所々虫食いされており、ひどく埃を被っている。
「うわっ!!」
紙を裏返してみると、そこには鉛筆かシャーペンで書かれた人間の生首の絵が描かれていた。
若い男の顔だった。
僕と同い年くらいの人だろうか。
ただ、なんでこんなところに絵なんか。。
そこまでリアルではない絵だが、逆にそこが不気味さを増して感じさせていた。
(今度高橋さんに相談してみよう)
時刻は1時20分過ぎ、次の日も1限から授業があったので、絵のことが気になりながらも寝ることにした。






















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