とある”まじない”について教えてもらった
夜中に願い事を書いた紙を燃やすと願いが叶うが、叶った分何かしらの代償を払うという。
まぁよく聞くありがちなものだが、一つだけそうではないところがある。
それは自分の願いは叶えられないところだ。
つまり、他人の願いを叶えられるが叶えた分の代償は願った本人が払わないといけないという訳のわからないものだ。
しかし俺にとってはまさに理想的なものだった。
なぜなら俺には愛してやまない妹がいるからだ。
妹が喜んでくれるならどんな代償だって払ってやる、本気でそう思えるくらい妹のことを大切に思っていた。
もちろん完全に信じてるつもりではないが、もし本物なら妹もきっと喜んでくれると、俺は半ば冗談のつもりでまじないをした。
願い事は試しに妹が苦手教科のテストで百点とれますようにと願った。
すると信じられないことに本当に妹はテストで百点をとった。
いつもは平均ギリギリの科目で百点をとったと嬉しそうに家族話すところを見ると、俺も心から嬉しく思った。
しかし同時に代償についても、頭がいっぱいになっていった。
当然後悔してないが、一体どんな代償を払うのかという恐怖と焦りが少しずつ積もっていったその時だった
「パリーーン!!」
耳の奥を刺すような急な大きな音に俺は跳ね飛ぶように体をビクつかせ、すぐに音のなった方へ走った。
どうやら母が皿を割ったようだ、だかただの皿ではなく母が昔から大事に使っている皿だった。
父と妹心配のの言葉をかけながら母に駆け寄っていくが、何故か俺の体は動かず呆然と立ったまま割れた皿をみていた。
それから数日、結局これといって代償といえるようなことはなく、もしかしたらテストは偶然だったのかもしれないと思いもう一度まじないをすることにした。
朝家族て朝食を食べていると、妹が今度コンクールがあると話し始めた。
妹は美術部に所属していて年に数回コンクールに絵を出している。
ちょうどいいと思った俺は、今度の願い事に妹がコンクールで最優秀賞をとれますように願った。
するとなんと本当に妹は最優秀賞をとった。
今までみたことない程喜びながら、賞状を嬉しそうに部屋に飾る妹の姿を見ると俺の心は満たされていった。
だがとなるとおかしなことがある。
願い事が叶ったなら代償を払わないといけないはず、なのにどうして俺は無事なのか。
代償について思考を巡らせていたその時だった
「ドドダダン!!」
鈍く重い大きな音がなり俺は勢いよく部屋を飛び出し音がした方へ走った。
そこには階段の下で腕を抑えながら苦しむ父の姿があった。
すぐに母が救急車を呼び父は運ばれた、幸いにも骨は折れておらず打撲ですんだ。
母と妹が安堵しているなか俺は一人鳥肌が止まらなかった。
一度目の願いでは母の大事な皿が割れ、二度目では父が階段から転げ落ちた。
間違いなく俺が願った願い事の代償だ。
そう思うと俺はより一層このまじないへの不気味さが増した気がした。
つまりこのまじないは自分以外の願いしか叶えられず、叶えた分の代償は願った本人ではなくその人にとって大事な人が代わりに払う
めちゃくちゃなものなのだった。
俺はその日を境にこのまじないはしないと決めた。
俺が代償を払うならともかく、俺の大事な人が代わりに不幸になるなんて俺にはとても耐えられなかったからだ。
妹の喜ぶ顔はもっとみたかったが仕方ないこれで、また平穏な日々が戻るそう俺は思っていた。
それから10日ほど立っておかしいこことが起き続けた。
妹にあまりにも不自然に不幸が続いた。
ものをなくしたり、なにもないところで転んだり、この前なんか車に引かれそうになったりとただの偶然とはとても思えなかった。
しかも心なしかどんどんエスカレートしていってるような気がする。
もしかしたらまじないをやめたことが原因なのかもしれない、なんとなくしかしどこか確信めいたものを感じる。
そんなことを授業中に考えていたとき、窓際の席に座っていた為ふと外のグラウンドをみた。
すると不自然に人が集まって何かを囲んでいた。
どうしたんだろうと思ったその時俺ははっ!として勢いよく窓を開け、身を乗り出すようにその集団をじっと見つめた。
思い出した、いまの時間は妹が体育の授業でグラウンドで球技をしていたはずだった。
俺はふと最悪な光景が脳裏に浮かんだ、そしてその予想は的中してしまった。
数十分後、救急車が到着し妹は運ばれた。
後で話を聞くと飛んできた野球ボールが妹の頭に直撃し妹は気を失ったらしい。
幸いにも脳に傷はなく、一日入院し翌日無事退院した。
そしてその日俺は意を決し、まじないを再開した。
再開したとたんパタッと妹の不運がなくなり、俺の願った幸福が訪れた。
だが当然その分の代償として俺の大事な人たち、両親や唯一の親友に不幸が訪れた。
なるべく代償が小さくなるよう、願い事も些細なものにした。
それでも回りは不幸になる、なのに回りを不幸にしているおれ自身は不幸もなく、普通の日々を送ってる事実がより一層俺の心に罪悪感を溜め込んでいった。
だが当然俺もなにもしないままな訳はなく、まじないを解く方法を探し始めた。
いろんな人から話を聞いたり、図書館でそれらしいものについて調べたり、考え付いたものは即実践した。
そんなこんなで、まじないを再開してから一ヶ月経ち、俺は今図書館で本を読んでいる。
悔しいことにまだ解決方法は見つかってない。
人に聞いても既に知っていることばっかりだし、図書館も色々と読んでみたがダメだった。
まじないを解く方法なんてないのかもしれないと諦めかけていた時、ふと視界の端になにか映った。
よくみてみると、それは全体が真っ黒な薄い本で背表紙はタイトルは赤い文字で
「不幸福になるまじない」とかかれていた。
俺は半ば反射するように本を手に取り、すぐさまページをめくッた。
どうやら昔話の絵本のようだ。


























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。