左腕の違和感

父が亡くなってしばらくしてから
夜中にふっと目が覚めた。

横向きに寝ていた私の左腕を
何かがすーーっとこすった気がした。
何？何？とプチパニックに陥る。

その時は、ペットを飼っていたのでもなく
誰かと一緒に寝ていたわけでもなかったからだ。

心の中で「何？誰？」と思ったら
知らない男の人の声で
「誰だ」と聞こえた。

その声は私にしか聞こえなかったらしく

すぐ隣の部屋で寝ていた人には聞こえなかったと。

目を開けたら最後
見てはいけないものを見てしまう気がして
怖くて目を開けられない。

布団を頭まですっぽりかぶって
ぎゅっと目を閉じたが
また、すすーーーっと何かが腕をこすった。

やだやだ。何だか分からないのは怖い
でも、怖くて目を開ける勇気は持ち合わせていない。

布団の中で「お父さん？」と小さい声で呼んでみたけど
当然のごとく返事はない。

寝返りを打つ勇気もなく
布団をかぶって蒸し風呂状態のまま寝る事に。

眠れそうにないので羊を数えようと試みたが
さっきの「誰だ」の声が蘇ってきて
羊を数えようにも数えられなくて
ただただ恐怖との闘い。
ほぼ一睡もできなかった。

その後はそういう事も起きず
父の49日法要を迎えた日に
兄弟にそのことを話したら
兄弟も同じような体験をしたと言われた。